2004 Fiscal Year Annual Research Report
いわゆる「台湾の国連加盟」問題と国際環境-国際機関の加盟方式の多様化を中心に-
Project/Area Number |
03J51081
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
加治 宏基 愛知大学, 中国研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 人間安全保障 / ケララ州 / 緒方・セン委員会 / 小康 / UNDP(国連開発計画) / 「台湾のWHO加盟」問題 |
Research Abstract |
概要 日本国内での「人間安全保障」をめぐる研究蓄積に加え、インド・ケララ州に関する開発論的考察を応用し、中国(北京市・貴陽市)において「人間安全保障」に関する調査を行った。調査の目的は以下2点である。1.国連の経済社会分野から創出された「人間安全保障」という概念・機能をめぐる中国での現状解明。2.それをふまえ、「人間安全保障」という概念が政治的には、特に中国の国連外交政策においていかなる機能を有しているのかを検証することである。 1.は、最貧困省のひとつ、貴州省の省都・貴陽市での実態調査に基づき、2.については、以下2側面に区分の上、北京市での調査・検証を行った。まず、政策的側面での検証として、中国外交部、北京人民医院、そしてUNDPやUNAIDSなどの北京駐在国連機関において、担当官へのインタビューや資料収集を実施した。次に学術面における検証としては、中国人民大学の時殷弘教授(国際関係)等へのインタビューを行った。 結論 1.「人間安全保障」という概念の不在 中国政府は、「人間安全保障」という用語の使用を避け、市民レベルでの概念の定着もなされていない。しかし実態としては、中国特有の代替概念(「小康」)により、その機能は補完されている。 2.概念不在の要因 国家の平和的統一を目標とする中国政府は、国家主権を超え得る定義不明瞭な概念の導入に警戒心がある。また、「人道的介入」についても同様の反応が示される 3.国連の経済社会分野における中国の姿勢 「人間安全保障」同様に、国連の経済社会理事会から創出された概念・機能としては、「持続可能な開発」があるが、前者に対する消極的態度とは対照的に、中国政府はUNDPなどとの協力関係を積極的に展開する。
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