2003 Fiscal Year Annual Research Report
中世・近世間の文化史的研究〜禁裏・公家社会を中心に〜
Project/Area Number |
03J51121
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小森 崇弘 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 和歌連歌 / 後鳥羽院 / 水無瀬神宮 / 手猿楽 / 中沙汰 / 立て花 / 包丁道 / 茶道 |
Research Abstract |
今年度は、当該研究の基礎作業を行うとともに、既に研究を蓄積してきた成果のうちいくつかを纏めて、学会の口頭発表を行った。 研究の基礎作業として、後柏原天皇期における『実隆公記』を中心とした活字史料をもとに、事象の基礎的な展開を追うために、和歌・連歌を中心としたデータベース化を進めている。現在のところ、特に注目されるのは、後鳥羽院を祀った水無瀬神宮との関係である。また、未翻刻史料の探査のため、3月末には東京での史料調査を行う予定である。 そのほか、修士論文で一部分にふれた禁裏における猿楽興行についてさらに研究を充足させ、芸能史研究会9月例会において報告した。報告にあたっては、公家集団の申沙汰(費用負担)のデータをより詳細に分析した上で禁裏での猿楽興行が乱後になって勃興した新規の行事であり、公家集団の分立化とリンクしていたことを明らかにした。また、演者にも注目し、参仕す猿楽者は町衆と公家関係者が混在しており、新しい文化事象の展開が、大きな社会の再編と関係する視点を提示した。 また、山科言国主従の立て花活動に関しても、修士論文の成果を踏まえた上で、再検討を行い、11月に行われた立命館史学会大会で報告した。山科言国とその家礼大沢久守の役割分担に注目し、新しい文化事象が禁裏において展開する場合、公家から、その被官層、さらに在野の芸能者が段階的に進出していくことを明らかにした。その上で、猿楽の展開と構造が近似しており、戦国期禁裏の文化事象展開の一類型と捉えられるととを考察した。一方で、COE関連の基礎調査を行い、京都市歴史資料館所蔵において包丁道の生間流関連の資料の写真版の複写を行いつつ、史料群の基礎的な性格の考察を行った。また、同資料館の写真版にある茶道藪内家関連の資料も、門人帳の解読を中心に研究を進めている。
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