2003 Fiscal Year Annual Research Report
中国の民事紛争処理における合意と強制-人民調停手続を手掛りに-
Project/Area Number |
03J52041
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
王 册 北海道大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 人民調停 / 裁判外紛争処理 / 民事第一審 / 棲み分け / 調停委員 / 紛争 / 訴訟 / 中国 |
Research Abstract |
本研究は、中国の裁判外紛争処理制度の一つである人民調停制度の利用を題材として、今まで好んで利用されてきた当該制度が、なぜ利用されなくなったのかを解明することを目指すものである。理論的、実証的に考察するため、本研究では、制度の分析と利用状況に関するデータの分析という二つの側面から、当該問題へのアプローチを試みてきた。 当該制度は、建国前の革命根拠地において樹立され、建国してからは、それを規定する三つの条例が公布されてきた。それぞれの時期において公布された条例の比較を通じて、制度の設計者の当該制度に対する期待が変化していることが明らかになってきた。また、人民調停制度の利用についてのデータを分析する際、その対比軸に、民事第一審の利用データも整理した。整理した16年分の両者利用データの比較分析からは、調停から訴訟への移行を実証的に証明することができた。また、紛争類型別にみた利用データの両者比較からは、棲み分けの現象が生じていることも明らかになった。 しかし、作業を進めるにつれ、制度ないしデータの分析では、たしかに制度設計者の狙いと、調停利用が減少している状況を把握することができるとはいえ、「なぜ人民調停が使われなくなったのか」という本研究の課題に答えを出すことは困難であるということも判明した。的確な答えを出すためには、具体的な事案処理に焦点を絞り、個別紛争処理における当事者の制度利用の動機、期待、ならびに制度の担い手である調停員の制度運用の実態を明らかにすることが必要であると思われる。これまでの制度の分析、利用に関するデータの考察を基礎として、次年度に向けて、若干の軌道修正をしつつ、研究を進めていく予定である。
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