2003 Fiscal Year Annual Research Report
北東アジア国際関係史:19世紀後半-20世紀初頭におけるロシア・中国・日本の国境
Project/Area Number |
03J52061
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Research Institution | Hokkaido University |
Research Fellow |
天野 尚樹 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 北東アジア / ロシア / 中国 / 日本 / 国境 / 日露関係史 / 中露関係史 / 国際関係史 |
Research Abstract |
平成15年未に交付を受けた本補助金を利用して、平成16年2月から3月にかけての約1ヶ月間、モスクワにて資料収集をおこなった。主として、ロシア科学アカデミー社会科学学術情報研究所、および、ロシア国立図書館で、19世紀後半にロシアで公刊されたサハリンをめぐる言説を、新聞・雑誌・単行本から可能な限り網羅的に収集した。論者は主に、海軍関係者、行政官、石炭開発関係者、ロシア帝国地理学協会員、流刑関係者などである。19世紀後半におけるサハリンをめぐるロシア側の言説の内容は、大きく3つに分類される。すなわち、(1)アイヌ等の異民族に関する人類学的・民族学的記録と異民族に対する統治政革、(2)石炭開発、(3)流刑をめぐる言説である。また、1875年に締結された樺太・千島交換条約以前にらいては、対日関係、サハリンにおける日本人との「雑居」(ロシア語では「共同統治」)状態をめぐる言説が多いことはいうまでもない。サハリンが、ロシア帝国という「想像の共同体」の枠内に組み入れられたのはまさしくこの時期であるが、サハリンが当時においてこの「共同体」の名実ともに確固たる一領域として認識されていたかどうかについては、上述の言説の論調をながめる限り、微妙な問題を含んでいる。たとえば、流刑者は、自由と市民権を剥奪されたいわば「非国民」としてサハリンに送られている。ロシアにとっては新領土であるサハリンを「ロシア化」するにあたって、その主たる構成要素として動員されたのが流刑者である。その「非国民」による土地に対して、どのような想像がおこなわれたか。収集した資料をもとにさらに綿密な言説分析をおこない、ロシアのサハリン=対日国境認識についての論文を平成16年度中にまとめる予定である。
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