2004 Fiscal Year Annual Research Report
電荷移動錯体を用いた新規有機トランジスタに関する研究
Project/Area Number |
03J52181
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐久間 広貴 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 電荷移動錯体 / モット絶縁体 / 電界効果トランジスタ / ambipolar動作 |
Research Abstract |
本研究では電荷移動錯体の持つ構造や特性をいかした有機デバイスの作製を目的として、キャスト法にて(BEDT-TTF)(TCNQ)錯体薄膜を形成し、電界効果トランジスタ(FET)を作製した。 作製したキャスト膜の構造は針状結晶が電極間を架橋するように成長しており、三斜晶のc軸または、単斜晶のb軸が基板面に対し垂直に配向していることをX線回折測定により確認した。また顕微ラマン分光測定を行い、錯体の電荷移動量を見積もると0.2〜0.3となった。この値は三斜晶の文献値に近い値となった。これらの結果から、チャネル部は三斜晶結晶のBEDT-TTFおよびTCNQからなる連続カラムによって形成されていると考えられる。この素子のFET特性は電子・正孔の両方が薄膜内を伝導する"ambipolar"動作を示した。このような現象が現れた原因は、正孔および電子が伝導カラムに注入されることにより実現すると考えられる。 また、導電率の温度依存性を測定すると、V_<GS>=0Vまたは負の電圧を印加した場合には典型的な熱活性型の温度依存性を示した。一方で正のV_<GS>を印加した場合には約250K付近まで金属的な温度依存性を示した。他のモット絶縁体においては化学的キャリアドープを行うことで金属状態の発現が報告されている。従って、今回得られた結果は電界効果キャリアドーピングによる物性の制御の可能性を示したものである。また極大値をとる温度付近ではI_S-V_<DS>特性の形状が変化していることが確認された。250K以下ではV_<DS>=0V付近における曲率が変化しており、注入障壁の出現を示唆するものである。このことは何らかの原因によって錯体が絶縁化したものと考えている。 周波数特性についても測定を行った。その結果、ゲート-ソース間の静電容量による電流が増加したため100Hz以上の測定は困難となったが、その範囲ではほとんど信号は減衰しなかった。従って、電極構造を工夫すれば、高速動作する素子の作製も可能になると考えている。
|
Research Products
(2 results)