2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J52221
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 恭 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 数理ファイナンス / マーケット・インパクト / 流動性 |
Research Abstract |
数理ファイナンスにおいて、Black-Scholesの理論やMertonの最適ポートフォリオの理論は理想状態の市場モデルに対する結果を与えているが、より現実的な問題として流動性の問題がある。その1つとして、投資家の証券の売買が証券価格を変動させてしまうマーケット・インパクトの問題があるが、私はその問題を考慮した市場モデルに対する研究を行った。具体的には、自己の投資行動による証券価格への影響が所与であるとしたとき、投資家が保有証券を売却する際の最適な執行戦略について、終端時刻における清算価値の期待効用の最大化問題として研究を行った。まず離散時間モデルにおいて、対応するベルマン方程式を求め、そこから最適戦略過程及びその影響を含んだ証券価格過程がフィードバック形式で得られた。 次に、取引時刻の間隔を短くすることによる極限として、連続時間モデルにおける最適戦略および証券価格過程を導くことを考察した。その際、投資行動が証券価格に与えるマーケット・インパクトの影響が取引時刻の間隔に比例して減少していくとした場合には、得られる極限におけるマーケット・インパクトの影響は消滅し、理想状態との乖離は起こらないことが分かった。 一方、既に示した一般均衡理論に基づく証券価格過程の構成の枠組みで、短期的な需給バランスの崩壊が価格変動にもたらす影響について研究し、特に元の証券価格過程が幾何ブラウン運動とする場合は恒久的マーケット・インパクトに、幾何Ornstein-Uhlenbeck過程とする場合は一時的マーケット・インパクトに対応する影響をそれぞれ与えることが分かった。
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