2003 Fiscal Year Annual Research Report
隕石重爆撃期における大気、海洋、及び生命の起源・進化に関する基礎研究
Project/Area Number |
03J52241
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関根 康人 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 化学実験 / メタン / 触媒反応 / 原始地球 / タイタン / 大気の起源 / クラスレート・ハイドレード / 原始ガス惑星円盤 |
Research Abstract |
タイタンは土星系最大の衛星であり、窒素やメタンに富む厚い大気を持っている。この窒素やメタンから成るタイタンの大気組成は、原始地球大気の組成に近いと考えられ、タイタンの大気の起源・進化を調べることはタイタン自身のみならず、原始地球の大気や生命の起源を考える上で非常に重要と考えられる。特にタイタン大気のメタンの起源については不明な点が多く、その生成プロセスなどは良く分かっていない。 タイタン大気のメタンの起源を考える上では、原始ガス惑星円盤における主成分である一酸化炭素からメタンを生成する反応が重要になる。Fischer-Tropsch触媒反応は、金属鉄表面で一酸化炭素と水素からメタンが生成される触媒反応であり、原始ガス惑星円盤内において反応が起きた可能性が示唆されている。しかしながら、これまで原始ガス惑星円盤のような反応領域で生成率をもとめた実験はなく、原始ガス惑星円盤においてどのくらいの反応率で反応が起きていたのかを正確に推定することはできていない。 そこで、私は原始ガス惑星円盤を模擬した反応条件において化学反応実験を行った。そして、生成物であるメタンの生成率を測定し、その圧力依存性と温度比依存性について調べた。その結果、温度が約600K以上になると、表面に吸着した炭素がグラファイト化してしまい、生成率が温度とともに低下していくことが分かった。そのため、原始ガス惑星円盤におけるメタン生成は、温度が550K付近の狭い領域においてのみ進行するということが分かった。本研究の結果は、Fischer-Tropsch触媒反応によって原始ガス惑星円盤にメタンに富む領域ができ、そこで生成したメタンに富む微衛星が、タイタン大気におけるメタンの起源として重要であったことを示唆する。
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