2004 Fiscal Year Annual Research Report
隕石重爆撃期における大気、海洋、及び生命の起源・進化に関する基礎研究
Project/Area Number |
03J52241
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関根 康人 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タイタン / 大気化学 / メタン / 有機物エアロゾル / 触媒反応 / 水素循環 / 原始地球 / カッシーニ・ホイヘンス探査 |
Research Abstract |
タイタンは土星系最大の衛星であり、窒素やメタンに富む厚い大気を持っている。また、大気中には有機物エアロゾルが存在していることが分かっている。この窒素やメタンから成るタイタンの大気組成は、原始地球大気の組成に近いと考えられる。したがって、タイタンの大気の起源・進化を調べることはタイタン自身のみならず、原始地球の大気や生命の起源を考える上で重要であると考えられる。 タイタンの大気中では、紫外線などのエネルギー源により活発な化学反応が起きており、水素原子をはじめとする様々なラジカルが、メタンなどの炭化水素から生成されていると考えられる。これらの反応性の高い原子は、大気中の有機物エアロゾルと化学反応を起こすことが考えられるが、どのような反応が起きるのか実験的に確かめられた例はない。 そこで、私はタイタン大気の有機物エアロゾルを模擬した"タイタンソリン"に水素原子を照射する実験を行った。そして、水素原子照射の結果、どのようなガスが生成されるかを質量分析し、また、タイタンソリンの組成や構造にどのような変化が現れるのか赤外分光計によって調べた。 その結果、水素原子とタイタンソリンとの相互作用は、以下の3つのプロセスからなっていることが分かった。ガス中の水素原子は、1)タイタンソリン中に存在していた別の水素原子と結合し、水素分子として放出されること、2)タイタンソリン中の不飽和結合に吸収され、タイタンソリンを水素化すること、3)タイタンソリン内の炭素を剥ぎ取りメタンガスを生成することがわかった。 本研究の結果から、タイタン大気中の有機物エアロゾルは、大気中を浮遊する間、光化学反応などで生成された水素原子を吸収していることが分かった。本研究結果は、この反応がタイタンの大気・表層間の物質循環、特に水素の循環に大きな役割を果たしている可能性を示唆する。
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Research Products
(1 results)