2004 Fiscal Year Annual Research Report
微視的機構に立脚したコンクリート材料の時間依存構成モデルの構築
Project/Area Number |
03J52271
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅本 晋吾 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高温乾燥収縮 / インクボトル効果 / 分子動力学 / SPC / Eモデル / クーロンポテンシャル |
Research Abstract |
本年度は,細孔空隙中の水分状態が体積変化に与える影響を,温度履歴の観点から捉えることを目的に実験を行った.一定の高温乾燥後,封緘状態を与えた場合,収縮の顕著な回復が観察された.常温での実験結果とは様相が全く異なる挙動を示した.高温環境下では,インクボトル効果によって閉じ込められた水分が安定性を損ない徐々に逸散する現象が,既往の実験結果により示されている.高温状態で封緘状態に移行した場合,インクボトル水が離脱し凝縮水として再分配されるため内部の相対湿度が上昇し,結果として巨視的な収縮の回復が測定されたと推察される.また,高温環境で乾燥を施すと,常温で乾燥させた場合と比較して同一逸散水量に対する乾燥収縮量は小さいことが分かった.水分が多く逸散するにもかかわらず収縮が進行しない理由に,インクボトル中の水分逸散により毛細管張力の作用面積が減少し収縮力が低下することが考えられるが,検証には至らず最終年度の課題とする. コンクリートの時間依存変形は,ゲル・層間空隙といった微細空隙中の水分挙動の影響を強く受けるため,分子動力学を利用した微細空隙中の水分の分子シミュレーションを行うことで,現象の把握・水分状態量の温度敏感性抽出を試みた.水分子にはSPC/Eポテンシャルを採用し,数nmの空隙内での粘性・拡散係数を計算した.固体壁のポテンシャルは,本来クーロン・LJポテンシャルの組み合わせが必要であるが,本年度はそこまで至らず簡易にLJポテンシャルのみで計算した.シミュレーションの結果,空隙半径が小さくなるにつれて水分移動の拘束が強まる現象を再現することができた.また,温度が異なることで空隙半径と物質輸送係数の関係は異なることが分かった.最終年度では,固体壁ポテンシャルにクーロンポテンシャルを導入し,シミュレーション結果をコンクリートの巨視的な時間依存変形挙動に結びつけることが課題に挙げられる.
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Research Products
(1 results)