2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J52281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武生 昌士 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 知的財産法 / 占有 / 特許法 / 先使用権 / 著作権法 |
Research Abstract |
1 知的財産法において占有の語が用いられる局面として、いわゆる先使用権(特許法79条)の制度趣旨に関する議論があり、この検討を本研究の出発点とした。 先使用権の制度趣旨に関して、従来(1)「経済説」対「公平説」という対立図式がある一方、(2)「発明の占有(状態)」という概念も用いられてきた。しかし、(1)と(2)とを有機的に関連づけた説明は十分にはなされておらず、また(1)という図式自体、必ずしも有意な帰結を導くものとして機能してきたわけではないことが明らかとなった。このことは、従来の研究が(1)や(2)を先使用権の場面でしか機能しない限定的なものとして理解してきたことによる。しかし、(2)の淵源であるドイツのKohlerの所説においては、占有概念は彼の特許法に対する体系的理解と密接に関わるものであったことに注意しなければならない。 そこでKohlerにおける占有概念について検討を行い、それが彼以降のドイツ学説・裁判例といかなる関係に立つかについて改めて検討を行った。この過程において、前記(1)はドイツの立法過程及び裁判例の系譜に属することが明らかとなった。Kohlerの学説は立法過程・裁判例とは一線を画した多分に講学的なものであるため、両者に有機的な関連がないのはむしろ当然といえるかもしれない。もっとも、ドイツの立法過程やその後の学説においても占有の語は見られるのであるが、問題はその語の内実にあるといえよう。この点で両者を架橋するIsayの学説を分析することが、来年度の第一の課題である。 2 なお上記長期的研究の外、音楽演奏会における著作権侵害の主体に関して判断された東京高裁平成15年1月16日判決について、東京大学商法研究会において報告を行った。JASRACによる使用料徴収実務と著作権法解釈との関係などの点で、本研究の観点から興味深い事例である。報告をまとめたものを来年度中に公表したいと考えている。
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