2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J52281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武生 昌士 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 知的財産法 / 占有 / 特許法 / 先使用権 / 先発明主義 / 先願主義 / 登録制度 / 発明の公開 |
Research Abstract |
1.昨年度に引き続き、「発明占有」概念に関するドイツ法の議論を検討した。 Isayにおける発明占有の概念は、民法におけるJheringの概念を特許法学に持ち込んだものであった。他方、Kohlerが前提としたのは、DerunburgないしKohler自身の占有概念である。同じく「発明占有」の語を用いていても、IsayとKohlerとで議論の内容が著しく異なるのは、このように前提となる民法上の占有の理解、ローマ法のpossessioの社会的作用に関する理解が異なることに起因する。そして、Isay流の「発明占有」概念はかなり特殊ドイツ的なものであるのに対し、Kohler流の「発明占有」概念は、我が国特許法学にも同様の考え方が存するのであり、その意味で知的財産法は占有概念と無関係とは言えないのである。 来年度は、このような占有概念の理解の差異が、いかなる要素に起因するものなのかを、民法・特許法における議論及び双方における諸制度(登記・登録制度等)と関連付けて論ずることにより、これまで行った分析をひとつの論文にまとめ上げることとする。 2.なお、ドイツ法から継受された概念に重点を置いた上記研究と並行して、アメリカ法に関する研究も試みた。上記1の議論の素材となっている先使用権について、従来アメリカにはこの制度がないという説明がなされていたが、1839年法は類似の制度を有していたようであり、しかも1839年法はアメリカ法が本格的に先発明主義を採用した後の法律であることが判明した。これは、先使用権の制度趣旨に関する我が国の学説のひとつに再考を促すものといえ、興味深い。上記1と共に、引き続き研究を行いたい。 3.このほか、東京大学商法研究会にて東京地判平成15年6月30日判時1831号149頁につき判例評釈を行った。また本年4月を期限として昨年度報告した判例評釈を1件公表予定である。
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