2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J52281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武生 昌士 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 知的財産法 / 占有 / 特許法 / 先使用権 / 発明者権 / 先願主義 / 登録制度 / 発明の公開 |
Research Abstract |
ドイツ特許法における「発明占有〔Erfindungsbesitz〕」概念につき研究を行った。この概念は、学説及び判例によって形成されてきたのであるが、その理解は学説ごとに多種多様であった。たとえば、かつて発明占有と発明者権〔Erfinderrecht〕とを同視する見解もあった。また、(2)の場面において、先使用者は発明占有者でなければならない、という説明がなされるところではあるものの、単に発明占有者であれば、すなわち完成した技術的法則を知っていれば足りるというものではなく、あくまで法文上発明の実施ないしその準備をなしていることが要求されるのであり、(占有状態〔Besitzstand〕の語が用いられることがある)、むしろこの占有状態のことを発明占有と呼んでいたのではないかと解される見解もかつては見られたのである。さらに、発明「占有」と呼ぶからといって、民法典の占有の規定が類推適用されることもなく、また準占有であるとの説明も今日ではあまり支持を得ていない。ドイツ民法典の制定によるひとつの占有理解の確立よりも前から、発明占有の語は用いられてきたのであり、その点に留意する必要がある(民法の規定の適用に適さないからといって、これを占有と呼ぶのは適切でないとするのは、歴史的経緯からすれば的を得ていない)。今日、完成した技術的法則を認識していることをもって発明占有と呼ぶことはドイツ法上明確なコンセンサスを得ているように思われるが、我が国の先使用権に関する判例において用いられる、発明の一種の「占有状態」であるとか、「自己のものとして支配していた発明」などの概念は、これとは区別して考えなければならない。これはBesitzstandに着目した発明占有概念を展開していたKohlerの学説が我が国の初期の判例学説に影響を及ぼしたことに起因するものではないかと思われる。
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