2004 Fiscal Year Annual Research Report
各種微生物学的アプローチによるエネルギー回収型廃水処理制御技術の開発
Project/Area Number |
03J52481
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
山田 剛史 長岡技術科学大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 嫌気性廃水処理プロセス / 嫌気性バルキング / 糸状性細菌 / 16S rRNA遺伝子クローニング / FISH法 / 門レベル |
Research Abstract |
近年、嫌気性廃水処理プロセスの普及と多様な廃水種への適用範囲の拡大に伴い、現在まで認知されてこなかった問題が頻繁に確認されてきている。その中で特に深刻な問題は、糸状性微生物の異常増殖による汚泥のバルキング化である。バルキング化した汚泥は、通常の汚泥と比較して浮上しやすく、汚泥の流出に伴うプロセスの破綻が懸念される。従って、バルキング現象の解明とその制御技術の確立は、プロセスを安定的に運転する上で極めて重要な課題である。本研究では、嫌気性バルキング現象を明らかにするために、その原因となる糸状性微生物に対し微生物分類学的、分子遺伝学的な解析を試みてきた。最近、食品加工工場からの糖系廃水を処理する嫌気性廃水処理プロセス内において、上記細菌とは形態学的に明らかに異なる微生物による汚泥のバルキング化が観察された。本年度は、そのバルキング化した汚泥を対象とし、そのバルキング原因微生物の特定と分子遺伝学的同定、及びその微生物の特異的検出技術の確立を行った。 バルキング化した汚泥を顕微鏡観察したところ、その大部分が比較的太い糸状性微生物によって構成されていた。本糸状性微生物を分子遺伝学的に同定するために、16S rRNA遺伝子に基づいたバルキング汚泥内微生物のクローン解析を行った。その結果、最も高頻度に検出されたクローン(30クローン中27クローン)は、分子系統的にどの門にも属さない極めて新規な細菌由来の塩基配列であった。得られた塩基配列が、バルキング汚泥に優占的に存在する糸状性微生物由来のものであるかを確かめるため、この塩基配列に特異的なDNAプローブを作成しバルキング汚泥に対してFISH法を適用した。その結果、本プローブは、バルキング汚泥を構成する糸状性細菌のみを特異的に検出することが判明した。以上のことから、本糸状性細菌は、現在まで全く分離・培養されたことのない、門レベルで未知な細菌であることが明らかとなった。
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