2003 Fiscal Year Annual Research Report
生体肝移植後免疫抑制剤中止症例における免疫寛容成立のメカニズムの解析
Project/Area Number |
03J52611
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉澤 淳 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生体肝移植 / 免疫寛容 / 制御性T細胞 / γδT細胞 |
Research Abstract |
我々の施設では、生体肝移植後、免疫抑制剤を中止した後も、良好な肝機能を維持している、すなわち、移植臓器に対する免疫寛容状態にある患者を経験している。その移植後患者における免疫寛容維持のメカニズムの解析のため、末梢血中に、免疫反応を制御するリンパ球の同定、機能解析を行った。 動物実験などで注目されている、CD25+CD4+制御性T細胞につき、移植後患者における働きを研究した。FACSによる解析では、CD25+CD4+T細胞は末梢血中その絶対数、割合は増えていたが、制御性T細胞のマスター遺伝子であるFOXP3のmRNAの発現量においては、正常小児と比較しても増加は認めなかった。さらに、CD25+CD4+制御性T細胞の、移植片に対する抗原特異性の有無をリンパ球混合試験にて調べたが、抗原特異性は認めなかった。CD25+CD4+制御性T細胞が免疫寛容維持に強く関与していることを示す結果は得られなかった。 また、今回、我々の研究から、移植後免疫寛容状態にある患者群において、末梢血中γδT細胞とくに、Vδ1T細胞が増加していることがわかった。移植後患者のVδ1T細胞の機能解析を行ったところ、刺激培養後にTh2サイトカインであるIL10の産生が健常人に比べ優位に増加していた。さらにVδ1T細胞のTCRの1次構造を調べたところ、ある特異的なclonalityがみられた。このことから、移植後にある特異的な抗原を認識し、Vδ1T細胞が増殖したと考えられた。移植後、全身状態が安定しているが、拒絶反応のみられる患者において、そのVδ1T細胞の増加はみられなかった。このことからVδ1T細胞が免疫反応の制御を行い、免疫寛容維持に働いている可能性が高いと考えられる。
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