2004 Fiscal Year Annual Research Report
日米両憲法学に於ける共和主義的視座の考察-「公」と「私」の問題をめぐって
Project/Area Number |
03J52661
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸野 薫 京都大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 19世紀アメリカ憲法思想 / 最高裁判所の役割 / マーベリ判決 |
Research Abstract |
1)今年度の課題 権力分立を理解する導入的テキストとして、また司法審査制の端緒として、アメリカ憲法学に於いて最も引証される判決であるMarbury v. Madison(1803)を基調に、昨年度から行っている憲法思想研究を深めることを主な課題とした。近年、当該判決は、200周年を期に本国アメリカで多数シンポジウムが組まれ、憲法学のみならず隣接学問分野から様々な提言がなされている。そうした新たな研究動向をふまえ、現代アメリカ憲法学の知的源流を探ることが、今年度の研究目的であった。 2)研究手法とその独自性 わが国に於ける先行研究では、判決文を詳細に扱うもの、あるいは自らの論証の導入的目的で浅くふれるものは多いが、その判決を支える憲法思想や政治・社会的背景までをもふまえた研究は、ごく一部を除けばない。しかし、上記研究目的を果たす為には、その研究は必須であり、そこでまず、歴史的文脈に忠実にするため、書簡・演説等を読み解く作業を行った。その上で、上記シンポジウムにおける新たな研究とも照合し、当時の指導者層の統治及び人民に関する認識と、実際の統治機構相互間及び、統治機構と人民との関係を有機的に捉えることを試みた。 3)研究結果 以上のアプローチにより、当時に於ける実際の政治と法の支配の関係が明らかになった。中でも、憲法を媒介とした連邦最高裁判所と人民の関係が、その国の永続的価値の形成に寄与するという理念は、現代に於ける司法権の位置づけを考える上で、有意なものとなるのではないかと考える。
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Research Products
(1 results)