2003 Fiscal Year Annual Research Report
日米両憲法学に於ける共和主義的視座の考察-「公」と「私」の問題をめぐって
Project/Area Number |
03J52661
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸野 薫 京都大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 共和主義 / ジェイムズ・マディソン / 合衆国憲法制定期 |
Research Abstract |
1)研究日的と今年度の課題 近年、日本の憲法学の視座として、共和主義、多元主義、民主主義、自由主義等、様々な視座を巡る論争が繰り広げられている。私は、今一度これら視座の根源的意味を明らかにすることで、かかる議論状況に対し新たな一石を投じることが可能なのではないかと考えている。そこで今年度は、かかる論争の中でしばしばその祖型として俎上にのぼりつつも、未だその評価の定まっていない合衆国憲法の父ジェイムズ・マディソンを研究対象とした。 2)研究手法とその独自性 わが国における従来のマディソン研究を概観すると、憲法学のみならず政治学・歴史学の分野においてさえ、マディソンの著名な論文『ザ・フェデラリスト』から、その憲法思想に言及するに留まるものが大勢を占めている。そこで、こうした従来の研究手法とは異なり、当該論文以外にも、憲法制定会議・書簡・演説等の資料をも読み解く詳細な歴史考証のアプローチを採ることとし、それにより独自の初期マディソン的視座を提示することを試みた。 3)研究結果 如上のアプローチに従い、当時の政治・社会状況をおさえた上で、何が変容し何が維持されたかを追求する作業に取り掛かった。その結果、権利保障の手段こそ異なれども、その手段により実現しようとした彼の憲法構想は、一貫して共和主義的視座であったということが明らかになった。そしてまた、その作業は、その時代における共和主義という語の(現代とは異なる)原意を明確化するのに資するものであった。 以上のような今年度の研究により、冒頭で示した論争を整理する一助を提供しえたのではないかと考える。
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Research Products
(2 results)