2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J52701
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
陳 捷 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 甲骨文字 / 殷代 / 信仰 |
Research Abstract |
本研究は、甲骨文字そのものを分析することによって、殷代の信仰を中国文化史の中に位置づけて、その特質を究明することを目的とする。本研究は殷代諸種の信仰を五つの時期に分け、時代の流れに沿ってその信仰の発展を追うという方法を採る。本年度はまず研究計画を具体的に立てて研究資料の収集を始めた。先行研究の成果を広く集め、深く理解し、正確に把握することに努めている。また中国河南省安陽の殷墟などを訪ね、甲骨文字の実物や関連文献を研究し、コンピュータによって整理を進めながら、論文作成の諸準備を整えた。甲骨文字に見える生活環境を中心に、殷代信仰の歴史的社会的背景を分析し、殷代信仰研究に必要な環境論の部分から着手して、天神(天の神)主に上帝、日、雲、雨、風、雪などの信仰を考察し、論文「甲骨文字における殷代の天神信仰」をまとめ、『人間・環境学』第十三巻に発表する予定である。この論文では、それぞれの甲骨文字の字形とその信仰対象としての性質との関係を考察する。次に董作賓の断代基準(近年の研究成果により若干の修正を加えられたもの)によって、それぞれの関連卜辞をすべて時代順に配列し、通時的な視点から文字や信仰の発展及びそれらの関連性を実証的に分析する。また近年考古学の成果を取り入れ、安陽での筆者の実地研究の成果をも踏まえて考証する。これは単に文献資料と考古資料とを結合させるだけでなく、むしろ両者を重ねあわせ、相互に結びつけるものである。さらに文字と信仰を文化史の流れに正確に位置づけて、それらの源流を体系的に明らかにしてみる。来年度は以上の研究成果を踏まえ、地示(土地の神)、例えば社、四方、四戈、四巫、岳、河などを検討し、論文を書き進める予定である。
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