2005 Fiscal Year Annual Research Report
労働市場における雇用と賃金の調整についての実証研究
Project/Area Number |
03J52771
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安井 健悟 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 下方硬直性 / 名目賃金 / デフレーション / 労働供給 / 賃金弾力性 / マーシャル / ヒックス / 高額所得者 |
Research Abstract |
今年度、私は2つの論文をまとめた。第1の論文は前年度からの研究の成果をまとめた、"Deflation and Downward Nominal Wage Rigidity : Evidence from Japan"である。この論文の目的は、労働市場の調整機能の阻害要因となる名目賃金の下方硬直性が存在するかを実証的に明らかにすることである。世界的にもあまり経験されていないデフレという状況下の日本のデータを使用することにより、強い下方圧力に対して、どのように名目賃金が反応しているかを観察した。得られた結論は、名目賃金は下方硬直的であるということである。また、年齢階級が若くなるほど労働市場の逼迫状況による下方圧力に対して硬直的であることが確認された。 第2の論文は、"Wage Elasticity of Labor Supply : A Survey-Based Experimental Approach"である。この論文では、仮想的な質問を用いて労働供給の賃金弾力性を計測した。計測した弾力性は、労働時間、引退時期、それぞれについてのマーシャルの弾力性とヒックスの弾力性である。ヒックスの弾力性を計測することは、税率変化による厚生損失を考える上で必要となる。これらを用いて、日本の一般労働者と高額所得者の弾力性の差、日米の一般労働者の弾力性の差が統計的に有意であるかを検証した。すべての弾力性について、日本の一般労働者と高額所得者のそれぞれの弾力性の間に有意な差は確認されなかった。また、労働時間のマーシャルの弾力性とヒックスの弾力性は米国人の方が日本人よりも有意に大きかったが、引退時期のマーシャルの弾力性とピックスの弾力性は米国人の方が日本人よりも有意に小さかった。
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