2003 Fiscal Year Annual Research Report
国際商事仲裁と裁判所の関係の研究--仲裁誘致に向かう裁判所の役割の調整を中心に
Project/Area Number |
03J52811
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
王 欽彦 神戸大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 国際商事仲裁 / フランス仲裁法 / ドイツ仲裁法 / 台湾仲裁法 / 中国仲裁法 / 仲裁地 / イギリス仲裁法 / 紛争解決 |
Research Abstract |
1、イギリス仲裁法の立法沿革を研究したほか、国連の国際商取引委員会(UNICITRAL)モデル法の議論状況を研究した。日本で去年成立され、今年3月1日から施行する仲裁法は、殆んど国連のモデル法に沿って立案したものである。しかし、研究から分かるのは、例えば仲裁地の設定と裁判所による仲裁手続への援助との関係について、モデル法の議論状況から必ずしもその合理性を見出すことができないが、日本の仲裁法は修正もせずにそのまま受け入れた。新法では、日本の裁判所の援助の対象となるのは、仲裁地が日本におく仲裁手続に限られるようになった。これは移動性がすごく高い現代社会では必ずしもビジネスの需要に応えられるのではないかと思われる。 2、仲裁制度の紛争解決制度における位置について、ドイツ法とフランス法との対照から示唆が得られる。例えば日本法では仲裁人・仲裁廷という用語を使い、英語でもarbitratorとarbitral tribunalという用語を使うのに対して、ドイツではSchiedsgericht(仲裁裁判所), Schiedsrichter(仲裁裁判官)という用語である。フランスではarbitrage, arbitreという裁判所と関係薄い用語を使うが、「仲裁人は正真正銘の裁判官で、仲裁廷は正真正銘の裁判所だ」と強調する教科書が少なくない。仲裁手続は私人による紛争解決という見方が普通であるが、仲裁人が裁判官であるということを強く意識すると、その見方が修正されることになるだろう。 3、日本の仲裁法の成立をきっかけとして、隣国の台湾(中華民国)と中国(中華人民共和国)の仲裁制度および仲裁法と比較研究を行い、とりわけ三国間の仲裁判断の承認と執行の部分について論文を書いた。日本の旧法と新法の下に、台湾と中国の仲裁判断及び裁判所の判決の承認執行についてどのような変化があるのか、分析研究をおこなった。五月に公表するよう修正をしている。
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