2003 Fiscal Year Annual Research Report
銭屋五兵衛をめぐる歴史叙述と歴史意識-地域社会の歴史意識と共同性についての考察-
Project/Area Number |
03J53231
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
高野 宏康 神奈川大学, 大学院・歴史民俗資料学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 歴史学 / 民俗学 / 文化人類学 / 社会学 / 地域研究 / 史料学(資料学) |
Research Abstract |
研究課題である、銭屋五兵衛および北陸地方を中心とする地域杜会の歴史意識について考察を進めるための本年度の研究計画は、第一に、理論的側面として研究方法および史料分析の方法論の問題を関連諸学問の最新の成果を踏まえて再検討すること、第二に、研究対象に関する関連書籍、史料の収集、第三に、史跡調査、聞き書きを目的とするフィールドワークを行うことであった。研究実績の概要は以下の通りである。 第一点目は、これまでの問題点であった言説分析の方法について、民俗学、アナール学派、杜会学の研究方法を比較して考察を深めた。その要点は、言説分析は現在の歴史学では表象分析の一環として行われているが、下部構造(杜会組織)分析との関連が不明瞭であった。同様の問題を、民俗学では心意として柳田國男以来考察されていたが理論的に不備があった。理論的に精緻であるが実証性に欠けるアナール学派、社会学との比較検討を行うことによって、歴史研究の分析方法として確立させることを試みた。この作業により、これまで関係が不明瞭であった上部構造(言説)と下部構造を統一的に把握することが可能となった。具体的な実証研究については来年以降の課題である。また、史料分析の方法論は、これまでの課題であった、多様な非文字資料の位置づけ方について、歴史叙述を、叙事詩的志向と年代記的志向に分類して考察する川田順造の文化人類学的研究を参考にして再検討を行った結果、統一的分類を行う理論的基盤を整備することができた。第二点目は、郷土関連書籍をかなりの程度収集することができた。三点目は、3月に行うフィールドワークのための基礎作業として、当該地域(瀬戸内海周辺、金沢を中心とする北陸)の背景、文献調査を行った。 以上の成果は、神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科の学内研究会で報告を行うた結果、ある程度支持が得られた。これを踏まえて今後の課題を追求していく予定である。
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