2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J53291
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河角 直美 (赤石 直美) 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 近代 / 風水害 / 森林破壊 / 災害復興 / 土地利用変化 / 歴史都市 / 山村 / 環境史 |
Research Abstract |
京都市は1200年以上の歴史を有する古い都市である。その京都市における防災・復興を検討するにあたり、760年〜1950年間の災害頻度について、村井康彦編『京都事典』(東京堂出版、1979)より分析した。まず、主に寺社や貴族の邸宅、町全体が被害を受けた火災は452回であった。平安時代中期〜鎌倉時代初期間、また室町時代〜江戸時代初期の間に集中して起こっていた。この両期間は、貴族から武士の時代、あるいは中世から近世へと社会構造が変動する過渡期であったといえる。火災は、社会構造上の問題が影響する災害であると推察された。 一方、自然現象に大きく左右される震災は、約50〜200年に一度の割合に分散して17回起きていた。ところが、鴨川の氾濫をはじめとする水害は168回で、その頻度は平安時代中期、室町時代末期、江戸時代中期に集中する傾向がみられた。また、旱魃は平安時代中期から末期に頻繁であった。水害や旱魃といった災害は、気象の影響だけではなく人文・社会的要因を踏まえなければならないのである。よって、被災後の復興過程の検証も、災害の背後にある社会的問題について言及しなければならない。 そこで、研究者は近年でもっとも大きな被害を受けた水害である1935年の水害について、水害実態とその復旧・復興計画を示した行政資料、ならびに被害耕地の復旧事業に関する資料を入手した。なかでも後者の資料からは、具体的な耕地の修復箇所とその費用、工事に掛かった人数などを明らかにできる。 さらに、上記の自然災害と人文社会的問題との関係性は、研究者の既存の成果である近代の山村における森林荒廃に対する社会的要因の影響と、その対応過程に類似していた。この成果を踏まえると、近代をテーマとし都市と村落との比較研究も可能である。そこで、研究者はまずこの内容について日本地理学会春季学術大会(於:東京経済大学)にて発表した。
|