2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J53291
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河角 直美 (赤石 直美) 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 京都 / 歴史災害 / 災害復旧 / 水害 / 棚田 / 耕地復旧 |
Research Abstract |
昨年度の成果から、京都では水害が多発していたことがわかった。なかでも、1935年に京都市周辺で発生した水害は、鴨川改修の契機となるものであった。この被害を受けた農地について、京都府は「昭和十年水害復旧耕地事業台帳」を作成していた。これは、耕地や畦畔、溜池などの復旧に掛かった補助金額を申請のあった事業毎に記した資料である。本年度はこの資料を活用し被災耕地の復旧プロセスを検討した。なかでも、文化財としても注目される棚田の被害と復旧を取り上げた。その結果、京都の棚田景観に指定されている愛宕郡大原村で60件、愛宕郡静原村で84件の補助申請があり、工事は着工から2〜3年の間に完了していた。ただし、この申請数と土地台帳の田畑被害記録とを比較すると前者が少なかった。具体的な復旧方法について、農家への聞き取り調査を行ったところ、人々は堆積物を取り除きもとの耕作面を掘り出して水田を復旧したという。耕地復旧には一部で補助金が利用されていたが、多くの場合個々の農家で行なわれたのである。これは、災害復旧における被災者負担の問題として注目される。この成果については、2005年度日本地理学会春季学術大会にて発表する。また、上記のような水田開発問題について、既存の研究成果である、山村における林野利用変化と棚田開発に関する研究としてまとめた。 一方、北野天満宮の日記史料をもとに、江戸時代初期における京都の災害とその対策について概観した。そこには、北野天満宮の小規模な被災といった身近な災害やそれに対する復旧事業が記録されていた。この史料は江戸時代初期における京都の災害を詳細に復原する際の貴重な史料といえる。次年度で、さらに考察を加えたい。 さらに、今年度は国際地理学会議に参加し、地理学における災害研究動向を短報としてまとめた。これは、地理学における災害研究の展望を検討するうえで重要な成果であった。
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Research Products
(2 results)