2003 Fiscal Year Annual Research Report
資源管理における共同性の変容-水利・山林入会を事例として-
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03J53321
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山本 早苗 関西学院大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | コモンズ / 水利 / 棚田 / 公・共・私 / 所有論 / 資源管理 / 共同性 / 環境社会学 |
Research Abstract |
本研究では、水利や山林入会を事例として、資源管理において、ローカルな実践を通じて生成される共同性がどのように変容しているのかを明らかにすることを目的としている。具体的には、以下の2つの観点から研究をおこなう。1)水利制度や入会制度を資源管理という側面から整理し、国の政策の中で地域の共同性の位置づけがどのように変化しているのかを明らかにする。2)水利権や入会権などの権利概念について、所有論の観点から分析する。3)水利組織や入会組織の組織構成や管理内容および管理主体の変化をたどることにより、地域内部での共同性がどのように変化しているのかを考察する。 このうち本年度は、1)の研究課題を主要課題としながら、水利研究の整理と予備調査を主要な課題として研究をおこなった。まず、日本の水利研究は、世界的にみても研究の蓄積を有する領域であるため、既存の水利文献の収集と整理を中心におこなった。そして、資源管理の持続性や境界・領域の再編という観点から、水利組織が果たした役割を明らかにした。また、水利制度の展開過程における水利慣行の位置づけと「公共私」区分について予備的に考察した。 本年度は、『環境社会学研究』に論文が掲載され、『水資源・環境研究』への投稿論文もすでに掲載が決定されている。それぞれの論文の題目は、「土地改良事業による水利組織の変容と再編」、「棚田における水利組織の構成原理と領域保全」である。また、日本村落研究学会での大会報告もあわせておこなった。報告内容は、「棚田における水利秩序の生成と再編」と題して、棚田地形を生かした独自の水利慣行を支える規範と、その規範を維持する人びとの社会関係について考察した。 来年度は、今年度の研究成果を踏まえて、7月末にノルウェーでおこなわれる世界農村社会学会にて報告をおこなう予定である。報告題目は、「水の利用と管理における公・共・私の再構築」を予定している。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 山本早苗: "土地改良事業による水利組織の変容と再編〜滋賀県大津市仰木地区の井堰親制度を事例として〜"環境社会学研究. 9号. 185-201 (2003)
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[Publications] 山本早苗: "Change of Irrigation System in Satoyama - A Case Study of Izeoya Institution at Ogi District in Otsu City -"ワールドワイドビジネスレビュー(同志社大学). 5巻1号. 160-166 (2003)
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[Publications] 山本早苗: "棚田における水利組織の構成原理と領域保全〜滋賀県大津市仰木地区の事例より〜"水資源・環境研究. 16号(印刷中). (2004)