2003 Fiscal Year Annual Research Report
喫煙者の肺がんリスクにおけるチトクロームP4502A6の毒性学的役割の解明
Project/Area Number |
03J61501
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮崎 雅史 北海道大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | チトクロームP450 / P450 / CYP / CYP2A / ニトロソアミン / 煙草 / がん / NNK |
Research Abstract |
肺がんは喫煙との因果関係が最も深いと考えられている.タバコ煙中の変異原・がん原物質のうち最も代表的なものの1つに,喫煙や製造過程でニコチンから生成するタバコ煙特異的かつ強力ながん原性N-ニトロソアミン類である4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ビリジル)-1-ブタノン(NNK)がある.NNKなどのタバコ関連N-ニトロソアミン類はヒトチトクロームP4502A6(CYP2A6)によって代謝的に活性化されて,遺伝子の突然変異を誘発することが明らかにされている.このこととマウスなどの実験動物にNNKを投与すると肺に効率よくがんが誘発される事実とを併せて考察すると,NNKなどのタバコ煙中のN-ニトロソアミン類による肺がんの誘発にはCYP2Aがヒトと実験動物に共通して関与している可能性が考えられた. そこで本研究では,ヒトと実験動物のCYP2Aのタバコ関連発がんにおける役割を解明することを目的とした.そのため,CYP2Aの代表的な阻害物質であるメトキサレンの前投与がNNK誘発マウス肺腫瘍の形成に影響を及ぼすか否かを検討した.その結果,マウスの肺にNNKの投与によって誘発された腫瘍がメトキサレンの前投与によってその投与量に依存して抑制された.また,免疫組織化学染色の結果から,NNKによって誘発された肺腫瘍部位においてCYP2Aが高発現していることが明らかとなった.これらの検討結果から,CYP2Aの触媒活性がNNKの投与によって誘発されるマウス肺腫瘍の発症に重要な役割を果たしていることが示唆された. 以上CYP2AによるNNKの代謝的活性化の阻害がタバコ関連肺発がんに対する化学予防の新規な分子標的になり得ることを明らかにした.本研究によって得られた知見は,タバコ関連肺発がんの基盤情報として有用であり,タバコ関連発がんの予防医学に十分に貢献できると考える.
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Takeuchi, H., Saoo, K., Yokohira, M., Ikeda, M., Maeta, H., Miyazaki, M., Yamazaki, H., Kamataki, T., Imaida, K.: "Pretreatment with 8-methoxypsoralen, a potent CYP2A6 inhibitor, strongly inhibits lung tumorigenesis induced by 4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone in female A/J mice"Cancer Research. 63. 7581-7583 (2003)