2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J61505
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大石 康二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Notch / Hes / Neural Precursor Cell / Survival / Caspase / Signaling |
Research Abstract |
哺乳動物の中枢神経系はニューロンとグリアから構成されるが、これらは神経系前駆細胞といわれる、多分化能、自己複製能をもつ前駆細胞から発生する。神経系前駆細胞は発生過程でプログラム細胞死を起こすことが知られており、この細胞死の人為的抑制は過剰な神経系細胞を産み出し、脳の肥大を伴う個体死を引き起こす。従って、神経系前駆細胞の生死は厳密に制御されているものと考えられる。しかしながら、その制御機構はこれまでほとんど明らかにされておらず、本研究において検討を行った。 神経系前駆細胞のin vitroでの培養には、FGF-2やEGFといった増殖因子が必須であり、これらを含む栄養因子を培地中から除去すると細胞死が誘導される。本研究において、この細胞死が細胞間の接着によって抑制されることを明らかにし、そのシグナル伝達にNotchが関与する可能性を見出した。すなわち、活性型Notchによって神経系前駆細胞の生存が著しく促進されること、またγ-セクレターゼ阻害剤で内在性のNotchシグナルを抑制することによって神経系前駆細胞の生存が抑制されることを示した。Notchの下流では、RBP-J/Hes経路が神経分化を抑制することが知られているが、Hes1やHes5はこの細胞死をほとんど抑制しなかった。従って、NotchシグナルはHes以外の経路を介して、生存を促進することが明らかになった。また、活性型Notchの発現によって、生存促進型Bc1-2ファミリーメンバーであるBcl-2やMcl-1の発現が上昇することを見出した。さらに、これらのタンパク質をRNA干渉法によって抑制したところ、Notchシグナルがこれら分子を介して生存促進に寄与していることが分かった。 Notchシグナルは癌化にも関与することが知られ、様々な癌組織で発現が亢進していることが報告されている。本研究の結果はNotchシグナルによる癌化のメカニズムの一端を示している可能性がある。
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