2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J61507
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川原 陽子 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | Akt / Mdm2 / E2F1 / p53 |
Research Abstract |
Aktは様々な系で細胞の生存、増殖促進に働く原癌遺伝子である。私はこれまでにMdm2がAktの標的であり、Mdm2がp53をユビキチン化するためにはAktによるリン酸化が重要であることを新たに示した。本研究では、AktがMdm2を介して他のターゲットを制御している可能性を検討した。 E2F1は細胞周期をG1からS期に進める働きをする転写因子である。また、E2F1はDNA損傷依存的に誘導されるアポトーシスにおいて必要であることが報告されており、その際にE2F1が安定化することが重要だと考えられている。E2F1はユビキチン-プロテアソーム系により速やかに分解されることが知られている。E2F1の安定性の制御はE2F1制御において非常に重要であるにも関わらず、E2F1に対するユビキチンリガーゼはまだ同定されていなかった。Mdm2はE2F1タンパク質の分解に関与することが既に示唆されているため、Mdm2がE2F1のユビキチンリガーゼである可能性を検討した。そして、Mdm2はin vitroの再構成系でE2F1をユビキチン化し、AktにSer166とSer186をリン酸化されることによりそのユビキチンリガーゼ活性が顕著に上昇することを見い出した。また、Mdm2とAktはCOS-1細胞においてMdm2のSer166とSer186依存的に協調してE2F1のユビキチン化を促進した。さらに、Mdm2に対するRNAiを行うことにより内在性のE2F1タンパク質の量が増加すること、およびp53^<-/->/Mdm2^<-/->マウス由来の繊維芽細胞における内在性のE2F1タンパク質の量がp53^<-/->マウス由来のものよりも増加することを見い出した。以上の結果から、Mdm2は実際に細胞の中でE2F1に対するユビキチンリガーゼとして働きE2F1タンパク質の分解を促進していることが明らかになり、そしてMdm2の活性はAktにリン酸化されることにより制御されていることが明らかになった。 E2F1はp53と同様にアポトーシスを誘導し、また癌抑制遺伝子として働いている。本研究で明らかになったAktによるMdm2を介したE2F1制御メカニズムにより、Aktによる増殖、生存、癌化制御メカニズムの理解へ近付けるものと考えている。
|