2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J61510
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片山 和浩 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生存シグナル / 抗癌剤 / 細胞周期停止 / 核外排出 / ユビキチン・プロテアソーム |
Research Abstract |
生存シグナル伝達系にはPI3K-Akt経路とMAPK経路が存在するが、多くの癌細胞において前者が異常活性化している事が報告されている。癌細胞の増殖にはこのような生存シグナルの活性化と細胞周期促進が重要な役割を担う事から、当該研究プロジェクトはPI3K-Akt経路と細胞周期制御の関係を明らかにし、この機序を阻害するような既存の抗癌剤の探索を目的としている。当研究室では以前より抗癌剤によるPI3K-Akt経路の遮断と、それに伴う癌細胞の増殖抑制に着眼して研究を進めており、既存の抗癌剤のうちエトポシド(VP-16)やシスプラチン(cDDP)、ゲルダナマイシンの誘導体17-AAGがAktの活性を抑制し、癌細胞の増殖抑制に寄与する事を報告してきた。これらの薬剤はG2期停止を誘導する事が多方面から報告されているが、PI3K-Akt経路の遮断とG2期停止の直接的な因果関係を証明した報告がない為、この詳細なメカニズムを解明するに至った。 前述の薬剤はいずれもAktの活性を抑制すると共に、G2/M期促進因子であるCdc2を不活性化する事が明らかになった。またPI3Kの特異的阻害剤LY294002によりPI3K-Akt経路を遮断した際もCdc2の不活性化が認められた。核内におけるCdc2の不活性化を担うのはWEE1Huであり、AktはWEE1HuのC末端領域を直接リン酸化する。それに伴いWEE1Huは14-3-3依存的に核外排出される事が確認された。アフリカツメガエルでは細胞質においてWEE1HuのホモログであるXe-Wee1がユビキチン・プロテアソーム依存的に分解される事が報告されており、Aktにより核外排出されたWEE1Huは細胞質内で分解される事が示唆される。上述の抗癌剤によるG2期停止はAktの不活性化に伴いWEE1Huの核内発現量が増加し、G2/M期促進因子であるCdc2の不活性化がもたらされた事に起因すると考えられる。
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