2003 Fiscal Year Annual Research Report
ムチンをターゲットとしたDNAワクチンによる癌転移の治療に関する研究
Project/Area Number |
03J61513
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鎌田 実香 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ムチン / DNAワクチン / MUC1 / 肺転移 / トランスゲニックマウス / 樹状細胞 / Tリンパ球 |
Research Abstract |
目的:将来的に臨床の場で利用できるような効果的な免疫療法の新たなプロトコールを作製するために、マウスにおいて、ムチンを抗原としたDNAワクチンにより転移を抑制すること、及び転移抑制に働くエフェクター機構を解析することを本研究の目的とした。 背景:ムチンは多くの腺癌で発現上昇が見られ、発現と悪性度とが相関している。一方で、ムチンに対する免疫応答がある場合には予後が良いという報告もあり、免疫応答を誘導できるかどうかが鍵と考えられる。本研究では、安全で強力な免疫原であるDNAをワクチンとして用いた。プラスミドDNAに含まれる多数のCpGモチーフは、それ自体がアジュバント活性を持ち、樹状細胞(DC)などの効果を最大限に引き出すことができると考えた。 方法と結果:.MUC1トランスジェニックマウス(ヒト上皮性癌細胞の主要抗原であるMUC1≠ノ対して免疫間寛容)において、MUC1発現メラノーマの肺転移のDNAワクチンによる抑制を試みた。骨髄から生成した樹状細胞を共投与したときのみ効果的な転移抑制効果が見られた。エフェクター細胞は、樹状細胞共投与のない時にはモノクローナル抗体NK1.1によって除去される細胞が主力であったのに比較して、樹状細胞を共投与した際にはTリンパ球の寄与率が高いことが明らかになった。Tリンパ球の関与はいわゆるWinnアッセイによっても証明された。マウスの遺伝子産物を抗原とするワクチンをマウスにおいて試験するためにマウス乳癌抗原として報告のあった分子の遺伝子クローニングに成功した。 結果の重要性:前臨床試験として最も重要なポイントとして、免疫寛容が成立していると考えられるヒトムチン抗原トランズジェニックマウスにおいて樹状細胞の利用によって、この抗原を発現した癌細胞の転移抑制を行ったこと、及び自己の分子であるマウスムチンDNAを用いたワクチンの検討を行ったことがあげられる。
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