2003 Fiscal Year Annual Research Report
構成的に発現しているI型IFNシグナルによる癌化抑制メカニズムの解明
Project/Area Number |
03J61523
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳井 秀元 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | インターフェロン / p53 / 抗腫瘍 / アポトーシス / 抗ウイルス応答 / 転写調節 / 光親和性標識 |
Research Abstract |
I型インターフェロンは抗ウイルス活性を持つ蛋白として同定されたサイトカインであるが、抗ウイルス作用のみならず、抗腫瘍作用や免疫調節作用など、様々な生理活性を持つことが報告されている.このうち、抗腫瘍作用についてはその機構について十分な解析がなされないままであった.一方、p53は癌抑制因子として知られており、DNA損傷や癌遺伝子による異常な増殖シグナルなどのストレスを引き金として安定化、活性化され、その標的遺伝子の転写を誘導することでアポトーシスや細胞周期の停止を引き起こし、癌抑制に寄与する.我々は、p53遺伝子の転写がIFN-α/βによって誘導され、それがp53蛋白質量の増加を伴うことを示した.IFN-βを野生型マウス胎児線維芽細胞(MEF)に投与するとp53蛋白の発現量が上昇することが検出された.そこでIFN-α/βシグナルにより形成される転写因子複合体ISGF3(IFN-stimulated gene factor3)の標的配列であるISRE (IFN-stimulated response element)を、p53遺伝子上で検索したところ、マウスとヒトでそれぞれ2つのISREが存在することを見出した.また、IFN-α/βシグナル伝達それ自体はp53を活性化しないことも明らかにした,次に我々は、IFN-α/βによるp53遺伝子誘導が実際に腫瘍抑制に寄与している例を示した.ヒトパピローマウイルス由来蛋白E6と、活性化Ha-Rasを野生型MEFに発現させると、トランスフォームしてコロニーを形成するようになる.このコロニー形成はIFN-βを投与することによって顕著に抑制された.一方でp53欠損MEFにHa-Rasを発現させることによるトランスフォーメーションにおいてはIFN-βによる抑制効果は見られなかった.さらにp53がウイルス感染によって活性化されたアポトーシス反応を惹起すること、およびp53が実際に宿主側のウイルスに対する防御にとって非常に重要であることも示した.本研究は、腫瘍抑制および抗ウイルス免疫におけるp53とIFN-α/βの新しい関連性を見出したものであり、臨床応用にも貢献する可能性があると考えている.
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Akinori Takaoka, Sumio Hayakawa, Hideyuki Yanai, et al.: "Integration of interferon-α/β signalling to p53 responses in tumor suppression and antiviral defense"Nature. 424. 516-523 (2003)