2003 Fiscal Year Annual Research Report
TGF-βI型受容体ALK-1,ALK-5を介した血管内皮細胞への生理作用
Project/Area Number |
03J61529
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 徳彦 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | TGF-β / 血管内皮細胞 / シグナル伝達 / 分子生物学 |
Research Abstract |
二種類のTGF-βI型受容体ALK-5、ALK-1を血管内皮細胞に異なる比率で発現させるために抗生物質テトラサイクリンによる誘導発現系の構築を試みた。その結果、内皮細胞への目的遺伝子導入は成功したが、比較に必要とするI型受容体発現を誘導させるために充分なテトラサイクリンを添加すると、この物質の毒性により細胞死が誘導され目的の条件を整えることができないことが明らかになった。そこで、ほかの誘導発現系に注目し、現在古典的な誘導系であるカドミウムによる発現系、および近年開発された細胞への負担が少ないとされるホルモンPonasteron Aによる発現系が内皮細胞で構築可能か検討を行っている。 ALK-5、ALK-1シグナルを比較すると、シグナル伝達の速度および持続する時間に違いが認められる。Smad7はTGF-βにより発現が誘導された後、I型受容体に結合し下流へのシグナル伝達を阻害するシグナル抑制因子であり、Smad7のALK-1、ALK-5への相互作用の違いが両者のシグナル伝達の特徴を制御している可能性がある。そこでSmad7タンパク質の発現制御について検討した。Smad7 mRNAはタンパク質をコードしない非翻訳領域が広く、ここにタンパク質発現制御シグナルが含まれると考えられた。この領域の重要性を示すため、Smad7 mRNA分子を解析した結果、広い非翻訳領域を持つmRNAの発現量は低く下流の転写開始点から発現したmRNA分子がより多く存在することが示され、さらに、非翻訳領域と考えられていた範囲に新たなプロモーター活性が測定された。これまでの報告はこの新規プロモーター領域を含まず検討していることから、より生理条件に近いSmad7の制御機構はここを含めた解析により明らかになると考えられる。この発現制御機構をもとに今後ALK-1、ALK-5との相互作用の違いについて検討を行う。
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