2004 Fiscal Year Annual Research Report
TGF-βI型受容体ALK-1、ALK-5を介した血管内皮細胞への生理作用
Project/Area Number |
03J61529
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 徳彦 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | TGF-β / 血管内皮細胞 / シグナル伝達 / 分子生物学 |
Research Abstract |
二種類のTGF-βI型受容体ALK-5、ALK-1が血管内皮細胞に対して異なる作用を誘導する機構を明らかにするため、内皮細胞株にそれぞれの遺伝子の薬剤による発現誘導系を構築することを試みた。テトラサイクリンを用いた系は細胞に対する毒性が強く目的に適していなかったことより、新たにカドミウムによる誘導系、および近年開発されたホルモンPonasteronAによる誘導系の導入を試みた。しかし、カドミウムの系では、導入したプロモーターの問題により薬剤非依存的に遺伝子の発現が誘導されてしまうことが明らかになり、PonasteronAでは薬剤の発現誘導能の弱さのため、目的遺伝子の発現を確認することができなかった。上記のいずれの系も内皮細胞株に対して有効な手段ではないことが確認されたため、現在細胞株自体を換え、マウスES細胞より内皮細胞へと分化誘導する系に対し上記の遺伝子発現誘導系を用いることができるか検討中である。 また、TGF-βI型受容体のシグナル制御因子Smad7の発現制御機構について検討した。Smad7遺伝子のmRNAには長いタンパク質をコードしない非翻訳領域が存在し、これがタンパク質翻訳制御に関与すると考えられる。TGF-βにより誘導されるSmad7転写産物を調べた結果、主な転写産物として非翻訳領域の長さが異なる3種類のmRNAが認められた(従来報告されていたものは最も長い産物)。これらの転写産物の非翻訳領域が翻訳に与える作用についてレポーター遺伝子を用いて検討した結果、いずれも翻訳を著しく抑制することが明らかになった。これはこの領域が高次構造をとり翻訳装置の機能を阻害したためと考えられる。そこで、3種の主な転写産物はタンパク質へ翻訳されない偽転写産物であり、発現量が少ないがタンパク質発現を担う主転写産物が別に存在すると仮定しこの証明を現在試みている。
|