2003 Fiscal Year Annual Research Report
接着分子ネクチンとカドヘリンの連結機構とがんの浸潤・転移
Project/Area Number |
03J61554
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡部 範子 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ネクチン / アファディン / カドヘリン / カテニン / 細胞間接着 |
Research Abstract |
上皮細胞の細胞間接着装置は主としてカドヘリン依存性アドヘレンスジャンクション(AJ)とクローディン依存性タイトジャンクションより構成されている。私共の研究室では、接着分子ネクチンと、それをアクチン細胞骨格に連結する蛋白質アファディンから成り、AJに局在する細胞間接着機構を見出している。ネクチン-アファディン系とカドヘリン-カテニン糸は間接的結合を介して連結し、協調的にAJの形成を制御しており、両接着系の連結分子はがんの浸潤・転移遺伝子の候補と考えられる。そこでネクチン-アファディン系とカドヘリン-カテニン系の連結機構を明らかにし、これに関わる分子ががん細胞の浸潤・転移能を亢進させているかを解析する。本年度の研究において、まずは、両接着系が共に局在する組織をマウス胎仔を用いて調べ、以下の結果を得た。 1.発生初期では、ネクチンおよびアファディンは原始線条や神経ひだの外胚葉および内胚葉上皮に濃縮が見られ、さらに神経上皮や体節などの上皮に発現を認めた。カドヘリン-カテニン系は主に細胞-細胞間に線状に分布するが、ネクチン-アファディン系はその頭頂側で点状にカドヘリン-カテニン系と共局した。 2.発生中期では、主に感覚器系(内耳の蝸牛、眼の神経網膜・網膜色素など)の上皮に発現が認められた。同種細胞間接着を主とするカドヘリン系に対し、これらの組織ではネクチン系の異種細胞間接着の存在が示唆された。 3.発生後期では、皮膚・毛・口腔を形成する重層扁平上皮にネクチン-1および-2の発現を認めた。近年、ネクチンと相同性の高いヒト遺伝子の変異による疾患(マルガリータ島症候群)では外胚葉形成不全(特に表皮の異常)を主とした発生異常が報告され、マウスネクチン-1の発現パターンはこれらと一致した。ゆえにネクチン-1は表皮を構成するケラチノサイト細胞において細胞接着・運動・増殖に関与していると考えられる。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 岡部範子, 黒田公美, 中西宏之, 清水一也, 高井義美: "Expression patterns of nectins and afadin during epithelial remodeling in the mouse embryo"Developmental Dynamics. (印刷中).