2003 Fiscal Year Annual Research Report
多細胞スパイク活動の情報幾何学的解析手法の確立と実験データ解析への応用
Project/Area Number |
03J61585
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
姜 時友 玉川大学, 工学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Computational neuroscience / STDP / H-current / Self-organization / Spontaneous activity / Cortical network / 'UP-DOWN' state transitions / Realistic model neuron |
Research Abstract |
研究の方向性において、大脳皮質神経活動の理解のために、神経発火の相関を実際の実験データを解析することを計画していたが、後述するような最新の知見をまず理論的に解明する方向へと修正が行われた。 近年、生体内細胞内記録により、神経細胞が'UP'状態と呼ばれる発火の閾値直下の電位をもつような状態と、静止電位付近を示すような'DOWN'と呼ばれる二つの状態を自発的に遷移することが明らかにされている。このような'UP-DOWN'状態は、大脳皮質神経回路において定常的に存在し、神経情報表現の本質にも関係する、重要な機構である可能性を秘めている。しかし、大脳皮質においてそのような二つの状態間遷移が生じるメカニズムについてはよくわかっていない。そこで、皮質錐体細胞における有力な情報処理的役割を担うと思われる二状態間遷移の発生メカニズムを検討するために、大脳皮質の神経回路を詳細にモデル化し、その自己組織化過程を計算論的に調べた。その結果、こうした自発的な遷移は主に、錐体細胞間再帰入力およびH-currentの脱分極効果による'UP'状態への遷移と、M-currentおよび抑制性入力による'DOWN'状態への遷移が繰り返すことによって実現されることがわかった。その他にも、回路において'UP-DOWN'状態間遷移は同期して起こったが、'UP'状態におけるスパイクは非同期的な発火を示し、さらに、このような'UP-DOWN'遷移を可能とする再帰的入力は、STDPによって学習されたシナプスによって実現され、その際先行研究でみられるようなSTDPによるシナプス間競合は見られないというようなことがわかった。これらの結果は、論文としてまとめNeural Networks誌および日本神経回路学会誌に投稿し採録された(後者は軽微な修正中)。また、上記研究内容を学位論文として執筆し、博土(工学)の学位を取得した。
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Research Products
(1 results)