2004 Fiscal Year Annual Research Report
多細胞スパイク活動の情報幾何学的解析手法の確立と実験データ解析への応用
Project/Area Number |
03J61585
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
姜 時友 玉川大学, 工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | UP-DOWN transition / Cortical Network / Spike-timing-dependent plasticity / H-current / Persistent activity / Model study / Self-organization / Sequences with millisecond accuracy |
Research Abstract |
近年、電気生理実験の発展によって、大脳皮質錐体細胞が、その膜電位を閾値直下にもつ'UP'と呼ばれる状態と'Down'と呼ばれる状態の二状態を自発的に遷移することが知られているが、このような二状態間遷移がどのようなメカニズムによって実現され、どのような情報処理を行うのかは依然わかっていない。そこで本研究者は、多様なチャネルを持つ現実的な大脳皮質神経細胞モデルを構築し、それらがAMPA型やNMDA型といったモデルシナプスを介して互いに結合し、抑制性介在細胞からのGABA型抑制を受けるような錐体細胞間ネットワークを、スパイクタイミング依存可塑性(STDP)に従う学習を行わせたときに形成される回路の動態と構造を調べた。 その結果、STDPによって学習された回路において、'UP'状態への遷移が、ミリ秒レンジの精度を持った時系列を構成し、それらが数秒を隔て繰り返すような挙動を示すことがわかった。このような時系列は近年、カルシウムイメージングによって観測された皮質スライスにおけるカルシウム流入の時系列と類似している。 このような回路は、H-currentを強く発現させたペースメーカーニューロンらによって駆動されるが、時系列の形成はペースメーカーと非ペースメーカーにわたって顕著な違いは見られなかった。また、学習された構造をシャッフルすることによって時系列は激減した。上記二点より、'UP'状態遷移の精緻な時系列は、ペースメーカーニューロンによって駆動された回路がそれらの入力を広範囲にわたって伝えるような回路が自己組織化されることによって生じることがわかった。 これらの結果は、9月に大阪にて行われた日本神経科学学会および、3月に米国Saltlakeに行われたcomputational and system Neuroscience(COSYNE)にて発表された。
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Research Products
(1 results)