2003 Fiscal Year Annual Research Report
海馬における複数シータ活動仮説の提案と生理実験による検証
Project/Area Number |
03J61587
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
渡辺 秀典 玉川大学, 工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 海馬 / シータ波 / 複数シータ活動仮説 / シータ周期 / whole-cell patch clamp / 海馬CA1錐体細胞 / current clamp / 位相シフト |
Research Abstract |
海馬の局所領域において各々独立の位相を持ってシータ波の周期で活動する神経細胞集団が複数存在する「複数シータ活動仮説」を生理実験によっで検証するため,本研究では段階的に以下に記す2つの実験を施行した. 1.海馬スライスを用いたフィールドポテンシャルの計測 ラット海馬スライス標本において,海馬CA1領域にシータ波周期の電流刺激とランダム時系列電流刺激を与えた場合,CA1領域の神経細胞集団活動であるフィールドポテンシャルを計測した.計測データの詳細な解析の結果,CA1錐体細胞層においてシータ周期の活動電位は観測されず,またランダム時系列刺激の頻度と強度に応じた海馬CA1錐体細胞層における細胞集団の活動閾値変化を明らかにした.本実験成果によって下記の実験における適切なパラメータを設定した. 2.Whole-cell patch clamp法による海馬CA1錐体細胞の応答特性の計測 初めにラット海馬スライス標本におけるCA1錐体細胞からwhole-cell patch clampを行った.生体におけるシータ波発生中の錐体細胞の膜電位変化を模擬するため,スライス標本内の錐体細胞の膜電位をcurrent clampモードによりシータ周期で振動させることに成功した. 次にcurrent clampを行った錐体細胞にシナプス入力として電流刺激を与えた場合,刺激頻度の増加,または刺激の時間構造によって細胞の膜電位に誘発されているシータ周期振動の位相がシフトする傾向を示した.本研究結果は,神経細胞への入力頻度,または入力の時間構造が,細胞が各々独立の位相を持った周期活動を生じさせる可能性を示唆する. 次年度では,追加データの収集及び解析をし,国内外での研究成果の報告を通じて研究の客観的評価を行う計画である.
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