2004 Fiscal Year Annual Research Report
海馬における複数シータ活動仮説の提案と生理実験による検証
Project/Area Number |
03J61587
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
渡辺 秀典 玉川大学, 工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 海馬 / シータ波 / 複数シータ活動仮説 / whole-cell patch clamp / 海馬CA1錐体細胞 / current clamp / 位相変化 / 線形和 |
Research Abstract |
海馬の局所領域において各々独立の位相を持ってシータ波の周期で活動する神経細胞集団が複数存在する「複数シータ活動仮説」をWhole-cell patch clamp法を使った海馬CA1錐体細胞の応答特性の計測することで検証した. まず生体におけるシータ波発生中の抑制性細胞からの周期的なシナプス入力による錐体細胞の膜電位振動を模擬するため,スライス標本内の錐体細胞の膜電位をcurrent clampモードによりシータ周期で振動させることに成功した. 次にシータ波発生中の興奮性シナプス入力を模擬するため,海馬Schaffer側枝に電流刺激を与え,錐体細胞に興奮性のシナプス入力を発生させた.電流刺激の強度,頻度,または時間構造によって細胞の膜電位振動の誘発を確認した.シータ周期の電流刺激列を与えた場合,細胞膜に誘導されるシータ周期振動の振幅に応じて膜振動の位相変化を明らかにした.この現象は細胞膜のコンダクタンス状態に依存すると推測される. 更に生体におけるシータ波発生中の抑制性細胞からの周期入力と周期的な興奮性シナプス入力の位相差による膜応答を明らかにするために,current clampモードによりシータ周期で膜振動をさせた錐体細胞にシータ周期の興奮性シナプス入力として電流刺激を与えた.刺激パターンとして4種の位相差刺激を用いた.この結果,細胞膜には位相差に係らずシータ周期振動が誘導される.また細胞膜に誘導されるシータ周期振動の振幅に応じて膜振動の位相変化を起こすが,その位相変化は2つの周期振動の線形和で記述されることを明らかにした.本研究結果は,生体において海馬CA1錐体細胞で発生する膜電位振動の位相がCA3細胞からの入力の効果に応じて変化している可能性を示唆する.
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Research Products
(1 results)