2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J61591
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
梶田 睦 国立遺伝学研究所, 生物遺伝資源情報総合センター, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 計算機モデル / C.elegans / コンピュータ・シミュレーション / 胚発生 / 細胞配置 / 細胞骨格 |
Research Abstract |
生物は様々な部品が複雑に絡み合う大規模システムであり,機能的・空間的な階層構造を特徴として持つ.本研究では生物をまるごと再現するコンピュータ・シミュレーションに向けた研究のさきがけとして,細胞レベル以上での力学的特性に注目したモデルを構築し応用することを目的とする. 再現対象として線虫C.elegansの発生過程に注目する.線虫の発生過程では細胞間相互作用が重要であり,それは空間的な細胞配置によって制限される.昨年度までに,細胞レベルの力学モデルを構築し野生型といくつかの変異型の細胞配置に対して再現性が高いことを検証した. 今年度は細胞質のモデリングを追加し,細胞数が多い原腸陥入期の細胞配置の再現について考察した.原腸陥入期は細胞のダイナミックな動きが見られる時期の一つであり,力学的な要素が細胞配置の決定に大きく関与している.この時期は,腸の原基となる二つの細胞(Ea,Ep)が胚の内部に入っていくことで始まるが,どのような機構によって細胞が陥入するかはわかっていない.またこの時期は細胞数が26〜28細胞くらいになることから,より多くの細胞を処理できるように工夫する必要がある.これまでのシミュレータでは細胞の形状を「質点をばねで接続したメッシュ状の膜」の力学モデルによって構成し,細胞分裂を「紡錘体の伸長」と「収縮環の収縮」によって実装した.今年度はこれに加えて,細胞質を弾性体として細胞内部にモデリングし,細胞間・細胞と卵殻間で及ぼしあう力を直接的に計算することによってより再現性を向上した.結果として,野生型における26細胞期の細胞配置を再現できるパラメータ空間を探索したところ,E細胞の細胞分裂方向がずれてしまうことを除き,野生型と同じ細胞配置を再現できるようになった.今後は再現性の向上とともに生物学的実験との組み合わせによって新たな知見が得られるようなシミュレーションにしていきたい.
|