2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J72505
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 俊 東京大学, 海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ボウズハゼ属魚類 / 形態形質 / 分子形質 / 集団 / 両側回遊 / 生活史 |
Research Abstract |
本年度は研究材料を得るため、ボウズハゼ属魚類(Sicyoptelus)の標本採集に重点を置いた。国外ではレユニオン島からSicyoptelus lagocephalusを45個体入手し、また国内では沖縄県から30個体の標本を入手することができた。これら標本の形態計測(外部形態10形質および内部形質9形質)と遺伝子解析の下準備(mtDNAの調節領域の増幅)は既に終えている。形態学的にはレユニオン島と沖縄県に生息するS.lagocephalusには地理的な差がないことが明らかとなった。今後、本種の集団構造については、インドネシア、バヌアツ、ニューカレドニアそしてタヒチの標本を早急に入手し、その標本を加えた後に形態学的および分子遺伝学的解析を行い、全貌を明らかにしたい。 次に和歌山県那智勝浦町の太田川と長野川、そして太田川が注ぎ込む湾において平成15年6月から毎月1回、S.japonicusの採集を行っている。これは、ボウズハゼ属魚類の特異な両側回遊の生活史を明らかにするためである。この採集を通じ、本種の産卵期は8月で、仔魚は孵化後すべて海へ流下し、稚魚が再び河川へ加入する時期は4月、そして5月から7月に河川の中流および上流域へと一気に遡河することが明らかとなった。現在、本種の成長を耳石解析により、また成熟を生殖腺の切片観察から明らかにしている最中である。 S.japonicusについては、沖縄県、高知県および静岡県からそれぞれ3〜24個体の標本を得た。これらに和歌山県の標本(28個体)を加え、本種の分子遺伝学的な集団解析を行った結果、地理的な集団を確認できなかった。さらに外部形態(10形質)および内部形態(9形質)についても地理的な差を確認できなかった。以上の結果から、本種は海洋生活期の仔魚期において混じり合い、メタポピュレーションを形成するのではと考えた。この結果については現在、論文作成中である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Watanabe, S., Y.Minegishi, T.Yoshinaga, J.Aoyama, K.Tsukamoto: "A quick method for species identification of the Japanese eel Anguilla japonica using real-time PCR : an onboard application for use during sampling surveys"Marine Biotechnology. (In press).
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[Publications] Watanabe, S., J.Aoyama, K.Tsukamoto: "Reexamination of Ege's (1939) use of taxonomic characters of the genus Anguilla"Bulletin of Marine Science. (In press).
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[Publications] Watanabe, S.: "Taxonomy of the freshwater eels, genus Anguilla Schrank, 1798. In Eel Biology (K.Aida, K.Tsukamoto and K.Yamauchi (Eds).)"Springer, Tokyo. 3-18(497) (2003)