2003 Fiscal Year Annual Research Report
新規高周期典型元素低配位化学種の創製とその構造・物性の解明
Project/Area Number |
03J83706
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
長洞 記嘉 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 速度論的安定化 / π電子共役系 / ジホスフェン / フェロセン / X線結晶構造解析 / 紫外可視吸収スペクトル / 理論計算 |
Research Abstract |
新規な機能の発現が期待されるπ電子共役系に組み込まれた含高周期元素低配位化合物の合成とその構造・物性の解明を目的とし研究を行った。本年度は、立体保護基として2,4,6-トリス[ビス(トリメチルシリル)メチル]フェニル(Tbt)基を用い、同一分子内にジホスフェンおよび有機金属ユニットを併せ持つ新規な酸化還元活性化合物である、フェロセニル(Fc)基を有するジホスフェン(TbtP=PFc)の合成を検討した。まず、TbtPH_2にブチルリチウムを作用させTbtPHLiを調製し、これをFcPCl_2に滴下することで対応するジホスファン(TbtPH-PClFc)を得た。これに対し、塩基としてDBUを作用させたところ、脱塩化水素反応が速やかに進行し、目的のジホスフェン(TbtP=PFc)を安定な紫色結晶物質として高収率で単離することに成功した。 TbtP=PFcのX線結晶構造解析にも成功し、構造パラメーターを解明した。その結果、P-P結合長は2.021Åであり、十分な二重結合性を有していることが判った。また、C-P-P-C部位はほぼ180度の平面構造であり、Fc基のシクロペンタジエン環と共平面を成していることも見出した。これらの結果は、π電子共役系の拡張を示唆している。 次に、TbtP=PFcの紫外可視吸収スペクトルの測定を行ったところ、371および542nmに極大吸収を観測した。前者はジホスフェン部位のπ-π*遷移に由来する吸収帯であり、これまでに報告されたアゾフェロセン誘導体のそれらよりも長波長シフトしていた。後者はFeのd軌道からジホスフェン部位のπ*軌道への電子遷移に由来しており、これは有機金属および有機ユニット間の相互作用の存在を強く示唆する結果である。これらの結果は理論計算結果からも支持され、実験と計算の両面から新規な機能性物質の性質を明らかにした。
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