2004 Fiscal Year Annual Research Report
新規高周期典型元素低配位化学種の創製とその構造・物性の解明
Project/Area Number |
03J83706
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
長洞 記嘉 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 速度論的安定化 / π電子共役系 / ジホスフェン / フェロセン / 紫外可視吸収スペクトル / 電気化学特性 |
Research Abstract |
含高周期元素π電子共役系を有する新規機能性物質の合成とその構造・物性の解明を目的とし、分子内に二つのジホスフェンユニットを有する分子を設計し、Tbt基により速度論的に安定化されたビス(ジホスフェニル)フェロセンの合成と性質解明を行った。Tbt基を有するホスフィンとブチルリチウムから調製したリチウムホスフィドと1,1'-ビス(ジクロロホスファニル)フェロセンを反応させることで対応するビス(ジホスファン)誘導体を合成した。引き続き、塩基としてDBUを作用させたところ脱塩化水素反応が速やかに進行し、効率良く目的の新規ビス(ジホスフェニル)フェロセンを与えた。得られた化合物は室温で安定な紫色結晶物質であり、さらに265℃の融点を有していた。 また、新規ビス(ジホスフェニル)フェロセンのX線結晶構造解析にも成功した。そのリン-リン結合長は2.015(3)Åであり、これまでに報告されたジホスフェン類とほぼ同程度の結合長で、十分な二重結合性を有していることが明らかとなった。また、C-P-P-Cねじれ角はほぼ180度の平面構造であり、さらにフェロセニル基のシクロペンタジエン環と共平面を成していることも明らかとなった。これらはπ電子共役系の拡大を示唆する結果である。 次に、ビス(ジホスフェニル)フェロセンの紫外可視吸収スペクトルの測定を行ったところ、384,480および539nmに吸収極大が観測された。これらはそれぞれジホスフェン部位のπ-π^*,n-π^*遷移およびMLCTに由来する吸収帯であり、これまでに報告されたジホスフェン誘導体のそれらと類似の波長であることが明らかとなった。さらにMLCT吸収はフェロセン中心鉄元素のd軌道からジホスフェン部位のπ^*軌道への電子遷移に由来しており、これは有機金属および有機ユニット間の相互作用の存在を強く示唆する結果である。さらに、これらの結果は理論計算結果からも支持され、実験と計算の両面から新規な機能性物質の性質を明らかにした。
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Research Products
(2 results)