Research Abstract |
アメリカ合衆国ハワイ州において,沖縄県出身一世移民の動向を主として地理学的な観点から調査,分析,考察を行った。オアフ島において81名,マウイ島30名,ハワイ島29名,計140名のアンケートを実施した。その結果,さきに行った南米における沖縄県出身移民とは異なる結果がみられた。 沖縄県出身移民を取り巻く社会,経済的環境が南米と著しく異なっていたため,入植後の定住状況および今日に至るまでの職業変遷に差異がみられた。南米と比較すると職業の変動が小さく,また転職のための空間移動も大きくなかった。これは,ハワイが島嶼部であるために空間的移動が制約されたこととも大きく関わる。また,プランテーションにおける就業の後,第三次産業に従事する者が多く,これはハワイの産業構造に対応したものといえる。 ハワイ,南米,両地域からみた沖縄への物理的,経済的近接性が大きく異なっているため,ハワイの場合は単なる出稼ぎ地として捉える者が多く,また南米と比較してハワイ社会には沖縄県出身者はなじまなかったこともあり,定着率は大きくなかった。一方,沖縄県出身者であるというアイデンティティは,南米とハワイではほとんど差はないようであったが,南米よりはるかに移住年が早期であった北米においては,一世移民のシェアが相対的に低下し,前述した沖縄への物理的,経済的近接性の増大のため,南米においてみられた,いわゆる「望郷の念を抱く」者は少なかった。 もっとも,調査対象とした一世移民が高齢化あるいは生存率が低くなっていたため,アンケートの実施に困難を来し,その結果回答内容における情報損失あるいは有意性の問題は議論される余地がある。
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