1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04305002
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
多木 浩二 千葉大学, 教養部, 教授 (10240699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 日佐夫 成城大学, 文芸学部, 教授 (70054476)
川端 香男里 東京大学, 文学部, 教授 (50000592)
長谷 正人 千葉大学, 教養部, 助教授 (40208476)
佐藤 和夫 千葉大学, 教養部, 助教授 (90114496)
若桑 みどり 千葉大学, 教養部, 教授 (30015234)
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Keywords | 全体主義 / 芸術 / イデロオギー |
Research Abstract |
20世紀の政治的歴史のなかで最も特筆すべき経験は、それが人類にもたらしたはかり知れない災いから言っても、「全体主義」であると言えよう。全体主義は、近代化の進展による共同体的統合の喪失のなかでクリティカルな問題として現れた、政治的形態(国家)と社会形態(大衆の生活意識)の不一致を解決しようとする企てであった。つまり全体主義は「国家と社会の完全な同一性」と定義される。われわれは、この全体主義をこれまでの研究のように政治体制として扱うのではなく、政治文化として扱うことを試みた。言わばそれは、全体主義を支配体制(国家)の側からではなく、その支配体制に組み込まれた大衆の意識、無意識の側から究明することである。われわれはそれを、思弁的に探究するというより、個々の状況(ナチズム、ファシズム、スターリニズム、天皇制)における個々の芸術やイメージ文化(建築、大衆雑誌、映画等)の分析を通じて検討する方法を選んだ。つまり全体主義のなかで、いかなる芸術形式が可能であったか、いかなる排除や、強制、いかなる迎合や利用が行われたかを細部に渡って眺めてみたのである。その結果は、個々に多様であるので、全体としての結論をここに書くことはできないが、しかし次のような共通の認識を得ることができた。つまり、全体主義文化の問題は、両大戦間期に発生したいくつかの政治体制にのみ当てはまる問題ではなく、近代の政治体制と文化との間につねに横たわっている問題だということである。例えば、ニューディール体制下の芸術家救済政策(WPA/FAP)を見ればわかるように、民主主義国家においてもある状況のなかでは芸術に社会性が要求され、おのずとイデオロギーを共有することが起きたのである。こうしてわれわれの研究は、近代社会の歴史をイメージ文化の側から探究するような、裾野の広い政治文化史の問題へと展開していくことを予感させることになった。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 多木浩二: "マンセルム・キーファーの芸術における写真" デジャ・ヴュ. 14. 109-124 (1993)
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[Publications] 鵜沢隆: "モダニズムとファシズム:イタリア合理主義建築運動とリットリオ宮の軌跡" 日伊文化研究. 48-57 (1994)
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[Publications] 田中日佐夫: "日清戦争と軍人遺族-松井昇の絵" 法廷に立つ歴史学. 214-225 (1993)
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[Publications] 長谷正人: "視姦された映画とマゾヒズムのまなざし" イマーゴ. 3-12. 188-196 (1992)
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[Publications] 三宅晶子: "『集団としての身体』の生成" 現代思想 ベンヤミン生誕100年記念特集号. 20-13. 149-158 (1992)
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[Publications] 若桑みどり: "フェミニズム美術史の新地平" 美術史(1994年3月出版予定). (1994)
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[Publications] 多木浩二: "神話なき世界の芸術家-バーネット・ニューマンの探究" 岩波書店, (1994)
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[Publications] 若桑みどり: "ケーテ・コルヴィッツの生涯と芸術" 彩樹社, (1993)