Research Abstract |
本年度は,主としてレーリー散乱法の中真空領域(10mTorr〜1Torr)の実用真空計への応用について検討した。昨年度の,低出力の半導体レーザーを用いた実験結果の検討から,測定のSN比の決定要因を明らかとし,それに基づいて2つの実験を行った。まず,(1)半導体レーザー励起YLFレーザー(単一パルス出力0.2mJ,波長523nm,パルス幅7ns,繰返し周波数1kHz)を光源に用い,圧力検出の下限と迷光レベル低減を検討した。次に,実用真空計に近いシステムとして,(2)連続発振半導体レーザー(出力500mW,波長680nm)を幅0.5msのパルス出力に変調したものを光源とし,アバランシェフォトダイオード(APD)を検出器に用いた装置を製作して,圧力検出下限の検討を行った。 (1)の実験の光源は,ビームの発散角(<10mrad)が小さく,波長が可視域にある。チャンバー内にあるバッフルの配置およびその内径を最適にしたことにより,迷光レベルを窒素ガス圧換算で20mTorrまで低下させた。これにより,10mTorrの圧力が検出でき,レーリー散乱信号と隔膜真空計との線形性が20mTorr〜9Torrの範囲において誤差7%以内で得られた。この結果から,小型のチャンバーを用いて,中真空領域での圧力測定が可能であることを示した。(2)の実験では,パルス当たりの受光光子数を,(1)の実験より約9倍大きくした。また,APDが内部増幅機能を持っていて,信号は増幅されるのにジョンソンノイズは増幅されないので,SN比が大きく改善された。これまでの結果として,迷光レベルを1Torr相当まで抑え,1Torr〜50Torrの範囲で,レーリー散乱信号と圧力との比例関係を,9%以内の誤差で確認した。すなわち,あと2桁の検出下限の改善により,実用真空計を実現できるところまで進展した。
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