1992 Fiscal Year Annual Research Report
細胞への物質導入能を持つ合成2分子膜の分子設計と導入機構の解析
Project/Area Number |
04558023
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 明夫 九州大学, 理学部, 教授 (30037379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福本 尚徳 福岡県工業技術センター, 主任研究員
赤尾 哲之 福岡県工業技術センター, 主任研究員
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Keywords | 合成二分子膜 / リポソーム / 遺伝子導入 / DNA・二分子膜相互作用 |
Research Abstract |
我々はこれまで、二分子膜を形成することが可能な陽イオン性両親媒性化合物の中に動物細胞内への高い遺伝子導入能を持つものがあることを見つけ、それらの物理特性と遺伝子導入効率との関係を調べてきた。今回は、(1)より導入効率の高い化合物の開発を目指して、これまでの結果をもとに新たな化合物を数種設計・合成し、それらの遺伝子導入能をいくつかの細胞について検討することと、(2)導入機構の解析を目指して、二分子膜とDNAとの相互作用の様子を解析した。 培養温度以下の相転移温度を持ち、コネクター部の種類やスペーサーやテールの長さの異なる化合物を新たに9種合成してそれらの遺伝子導入能を検討し、これまで得られていたものと比較した。COS細胞系にはこれまで最高の効率を示した化合物(I)がよかったが、CHO細胞に対しては今回合成した中に遥かによいもの(II)が見つかった。細胞によって二分子膜化合物に対する選択性があることは予相外であり、個々の細胞に適した化合物の開発の必要性が明らかにされると共に、導入の機構が非常に興味ある問題であることが示された。 二分子膜とDNAとの相互作用の様子を調べるため、これらの複合体のCDスペクトル、NMRスペクトル、蛍光特性、形態観察等を行った。複合体を形成することによって、両者とも構造変化が起こった。二分子膜はその分子配向性が乱され、その程度は遺伝子導入能の高い相転移温度が培養温度より少し低いものが最も大きかった。一方、DNAヘリックスの塩基間の間隔も広がっていた。また、DNAは既存のリポソームに添加しただけであるが、DNアーゼに対して完全に抵抗性を示し、二分子膜がDNAの周りを覆っていることを示唆しており、二分子膜の大きな組み換えが起こったことが考えられる。
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