1993 Fiscal Year Annual Research Report
成熟経済下の日本社会の構造的変容にかんする総合的研究-ミーイズムの深化過程を中心として-
Project/Area Number |
04610102
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Research Institution | SHIGA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鈴木 正仁 滋賀大学, 経済学部, 教授 (60046498)
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Keywords | 匿名性のコミュニティ / 電子メディア / リレーダイヤル / パーティーライン / チャット / ノン・プレイス・コミュニティ / 「愛」の文化 / ダイヤルQ^2 |
Research Abstract |
高度成長期以降の日本社会の変貌を、経済、社会、文化の三つのレベルにわけて、各レベルの変化と相関の総体をとらえるという本研究のもくろみは、前年までの (1)日本経済の現状分析 (2)現代日本の社会構造(職場・学校・地域・家庭)の分析を受けて、今年度は (3)現代日本の文化状況(生活文化・産業文化・マスコミ文化・消費文化)の分析に移った。当初の予定では、これら四つの文化領域すべての分析を年度内におこなうつもりであったが、学内で今年度の学務委員(学部長補佐職)という激務を命じられたこともあって、残念ながらそのすべてを遂行することは不可能であった。結局、「生活文化の変容」の部分を分析するにとどまったが、本年度のまとめとしてその部分を報告する。 すでに、(1)と(2)の分析で明らかにしたように社会が豊かになり、地域と家庭では生活ニーズの充足が相互扶助から外部委託へ、また職場と学校ではエリート育成が後期選抜から早期選抜へと大きく変わったことによって、従来の生活文化(貧しさの文化)が有効性をうしない、しかもその継承と革新すらおこなわれなくなった。こうした生活共同体の変質とその文化の衰退は、しかし人間にとって耐えられるものではなく、この「空白」を埋めるべく、近年発達著しい電子メディアを利用した「疑似共同体」とその文化が生みだされている。電話の「リレーダイヤル」やパソコン通信の「電子掲示板」がそれである。そこにはグループ性の制限メディアという特質を生かした電子架空世界の中だけの「匿名性のコミュニティ」が成立し、また匿名性に依拠した猥雑でひ弱な「愛」の文化が生まれ、現代人はつかの間の安息をそこから得ているのである。 こうした知見は、後述の『彦根論叢 287・288号』に論文として掲載するとともに、「社会・経済システム学会 第12回大会」で報告したが、さらに発展させ『社会・経済システム 第12号』に掲載の予定である。
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Research Products
(1 results)