1992 Fiscal Year Annual Research Report
成熟経済下の日本社会の構造的変容にかんする総合的研究ーミーイズムの深化過程を中心としてー
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04610102
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
鈴木 正仁 滋賀大学, 経済学部, 教授 (60046498)
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Keywords | 柔軟生産体制 / 協調的競争 / シングル化 / 友人ネットワーク / 個人主義的能力競争 / 地域機能の社会化 / 家族機能の商品化 / 文化の「空白」 |
Research Abstract |
高度成長期以降の日本社会の変貌を、「都市型社会」からさらに「高度都市型社会」への変化としてとらえ、経済、社会、文化の三つのレベルにわけて各レベルの変化と相関の総体をとらえるという、本研究の当初のもくろみはほぼ順調に進捗している。研究初年度として本年は、経済のレベルの変化を外需主導型安定経済から内需主導型経済へととらえたのち、社会構造レベルの変化の分析に移った。これをさらに、企業合理化(職場)、高学歴化(学校)、都市化(地域)、核家族化(家庭)という四つのレベルにわけて分析した結果、当初の予想とは異なり、フォーディズム体制から柔軟生産体制へ(職場)、後期選抜型から早期選抜型へ(学校)、「都市化」社会から「都市型」社会へ(地域)、「近代家族」化から「脱近代家族」化へ(家庭)という変化が新たに浮かび上がった。こうした社会構造の変化を、さらに文化のレベルへの影響という観点から考察すれば、職場と学校においては、エリート選抜競争で日本独自の「協調的競争」が崩れてむき出しの「個人主義的能力競争」が支配的となり、地域と家庭においては、生活ニーズの充足で労力交換による「相互扶助的な」かたちが廃れ金銭による「外部委託的な」かたちが支配的となる、という変化を読み取ることができた。これら二つの変化は、それぞれの生活共同体を構成する人間関係を変質させることによって、それらがこれまで果たしてきた生活文化(貧しさの文化)を継承し革新するという機能を破壊してしまった。それだけでなく、豊かな社会の到来によってこの貧しさの文化自体が有効性を失い、そこに、一種の「文化の空白」が生じたのである(以上、後出の『彦根論叢281号』に掲載)。今後の予定としては、この文脈のもとでこれに代わる疑似生活共同体と疑似文化の成立の分析に進み、さらに文化レベルの変化として、産業文化、マスコミ文化、消費文化の分析を行ないたい。
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Research Products
(1 results)