1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04610184
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Research Institution | 九州芸術工科大学 |
Principal Investigator |
松永 建 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (40040993)
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Keywords | 御輿歌 / 阿蘇 / テトラコルド / ペンタコルド / 田植え歌 |
Research Abstract |
平成4年度は阿蘇地方の御輿歌の基礎的調査を行った。調査開始段階では調査対象は10神社と予定されていたが、その後の調査でさらに4神社で現在も伝承され、あるいは以前行われていたことが判明した。祭礼が実施され、御輿歌も歌われた神社は阿蘇神社等13神社で、白水村白川神社1カ所は伝承が途絶している。今年度に8ミリヴィデオによる採集録画録音が可能であったのは9神社あった。これらの神社を含め、全地域の伝承者を個別に訪問し、演唱の録音テープ等による収録及び聞き取り調査、または保存会等で保存用に録音した記録テープの収集と複写(ダビング)を行った。この結果、阿蘇地方の御輿歌の基本的・骨格的な音楽資料はほぼ充足された。しかし、日程の重複による祭礼の未収録地、祭礼時の天候変化による御輿歌の省略、記録テープの不備(未録音部分、録音状況の不備その他)など、多くの問題が次年度に持越された。 採集録音された御輿歌については、歌詞の整理を行い、また音楽的部分は順次採譜を行い、コンピュータにより浄書記録した。詳細な音楽学的分析は、更に細部の資料を収集したのちに、音階等の音組織論を中心に行う予定であるが、自然倍音的3度・5度音程を主にした音組織による歌唱法のほかに、完全4度音程を反復進行させる歌唱法など、注目すべき音楽的特徴が阿蘇に存在することが判明した。 また、御輿歌は阿蘇神社から各神社へ伝播したと考えられるが、阿蘇神社系統によらない事例も南谷に数カ所あり、近世以後の阿蘇地方史の上から考察すべき問題点がある。
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