1992 Fiscal Year Annual Research Report
南西諸島の通過儀礼〜特に老年期及び死の儀礼〜に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
04610188
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
松永 和人 福岡大学, 人文学部, 教授 (90078460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 裕二 福岡大学, 人文学部, 講師 (50237327)
片多 順 福岡大学, 人文学部, 教授 (90037052)
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Keywords | 通過儀礼 / 長寿儀礼 / 老人 / 葬制 / 神葬祭 |
Research Abstract |
研究内容として、基本的に二つの課題を行った。その一つは、南西諸島における通過儀礼の中で、特に老人に関わる諸儀礼の分析を通して、老人の社会的位置づけを明らかにし、かつその文化的意味を問うてきた。第二に、死後、死者がいかに認識されているかについて、特に家族員との関わりを分析した。以上のような研究課題を遂行する上で、調査地として沖縄本島の那覇地区と首里地区、知念村、本部町、鹿児島県徳之島の徳之島町と伊仙町とを取り上げた。その結果、次のことが指摘されうる。 まず、長寿から死への移行において、本土とは異なる様々な習俗・習慣が認められた。(1)数え年85、88、97歳の長寿者を盛大に祝う。(2)こうした長寿祝いが、死への不安をなくし、死への移行をスムーズにする機能を持つ。(3)長寿祝いを済ませた者の死は、神になったとして、むしろ祝われる傾向がある。(4)死亡時の年齢と状況によって、その死が天寿であったかどうかが判断される。 また葬制を見るとき仏教の影響は少なく、例えばかって死者を墓地にまで運んでいた「タマヤ」に小型の鳥居が取り付けてあることに示されるように、いわゆる神葬祭の色彩が濃厚な所もある。死者は死後神になり、家族員を保護するといったような意味においても、家族員と密接な関わりを有しながらいわば一体的な存在として認識されている。そのことは、死者の霊を迎えて行う年中行事の諸儀礼に明確に示されている。葬制上の習俗を見ても、葬列の先頭の者が米と塩をまいて道を浄めて進んでいたということもあり、そのような習俗から、死を「不浄」とする従来の通念に対する対概念が提起された。現代との関わりについては、南西諸島の急激な社会変化により、伝統的葬制を踏まえながらも葬儀の「本土(ヤマト)化」が進行しているという状況が、特に都市部において見られた。
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