1992 Fiscal Year Annual Research Report
弥生時代・大陸系磨製石器の編年網の作製と地域間の比較研究
Project/Area Number |
04610246
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
下條 信行 愛媛大学, 法文学部, 教授 (20091233)
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Keywords | 大陸系磨製石器 / 弥生時代 / 石庖丁 / 石鎌 / 太形蛤刃石斧 / 柱状片刃石斧 / 扁平片刃石斧 / 有柄式磨製石剣 |
Research Abstract |
今年度は主に九州と中国・四国地方をとりあげた。大陸系磨製石器は縄文晩期後半に、稲作と共に北部九州に伝わる。その種類には、石庖丁、石鎌、柱状片刃石斧、扁平片刃石斧、有柄式磨製石剣、柳葉形磨製石鎌があるが、太形蛤刃石斧はただちに大陸系といえるかどうか問題があることが判った。 北部九州では、まずオリジナル型が伝わるが、ただちに形態の改変が始まる。日本化された大陸系磨製石器になるのである。早ければ、縄文晩期後半に始まる。石庖丁は片刃から両刃に、柱状片刃石斧は細身、斜基に、扁平片刃石斧は薄身に、石剣・石鍬は薄身の弛緩形に変化するが太形蛤刃石斧は縄文伐採石斧の特徴を半ば堅持している。弥生前期段階まで、こうした日本化への模索が進むが、それが転機をむかえるのは前期末の段階で、石剣・石錵は消滅し、片刃石斧類は日本型が定着し、太形蛤刃石斧は縄文的特徴を脱して、真の身厚の太形蛤刃石斧になり、この段階に到達した形態が中期に継承される。 瀬戸内への大陸系磨製石器の伝播は跛行的である。石庖丁、片刃石斧類は伝わるが、石剣・石鍬・石鎌は西瀬戸内に類少なく伝わるにすぎない。前期段階は石斧類は北部九州の日本化したものが伝わり、石庖丁は北部九州の外湾刃半月形が主体であるが、杏仁形、楕円形、直線刃半月形など多様である。石庖丁のこうした形態分化は西部瀬戸内で生じたらしい。これが、前期末以後になると地域色を鮮明にして、以後中期に継承される。石庖丁は杏仁形、楕円形、方形が主体となり、打製石庖丁も出現する。柱状片刃は平基、両刃風になり、扁平片刃は弛緩形となり、小礫の直接研磨品が出現するなど、朝鮮や北部九州と比べて、相当の懸隔が生じる。 山陰は北部九州〜東北部九州に通ずるところが多い。
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