1992 Fiscal Year Annual Research Report
「芳香環に結合したイソプロピル基の生体反応によるエナンチオ選択的変換」
Project/Area Number |
04640519
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
石田 孝 広島工業大学, 工学部, 教授 (50087970)
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Keywords | エナンチオ選択的変換 / イソプロピル基 / 生体反応 / プロフェン類 |
Research Abstract |
芳香環に結合したイソプロピル基がカルボン酸に変換した一群の化合物はプロフェン類と呼ばれ、非ステロイド系抗炎症作用物質として多くの物質が使われている。一方、イソプロピル基が芳香環に結合した化合物の中で、最も簡単な化合物であるクメンは、多くのシンナー・塗料に含まれ、体内における毒性は、ベンゼンより強いといわれている。クメンの代謝についてはこれまで、Williamらにより三種の化合物が報告されており、その中にはプロフェン類に該当する化合物が含まれているものの、その立体化学については明らかにされていない。今回、われわれはクメンをウサギに経口投与することにより、4種の化合物(1〜4)を単離し、それらの立体化学を決定するとともに、代謝経路を推定した。4種の代謝物のうち、1種は今回はじめて見いだされた。化合物の構造の同定ならびに決定は、標品の^1H-NMR(90 MHz)、MSおよびIRなどスペクトルデータの比較に基づいて行った。立体化学については、キラルカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにおける(R)-および(S)-体の標品(市販品ならびに合成品)との保持時間の比較により行い、R:S比を決定した。 その結果、クメンの代謝ルートとしては、AおよびBの二つが考えられ、ルートAではベンジル位のメチンが酸化をうけ、ノンキラルな三級アルコールとなり、そのメチル基がさらに代謝されて、ヒドロキシカルボン酸となった。このとき、ベンジル位の炭素の立体化学はR:S=70:30となった。一方、ルートBでは、イソプロピル基のメチルが酸化された一級アルコール(R:S=91:9)を生じ、さらにこのアルコールが酸化されたカルボン酸(III)が得られた。この酸(3)の立体化学は、R:S=1:99であったことから、中間的に(R)-のカルボン酸を生じ、ついで生体内で反転が生じたものと考えられる。 I:2-phenyl-2-propanol II:(R)-(+)-2-phenyl-1-propanol III:(S)-(+)-2-phenylpropanoic acid IV:(R)-2-hydroxy-2-phenylpropanoic acid
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Research Products
(3 results)
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[Publications] T.Ishida: "Enantioselective metabolism of cumene" Xenobiotica. 22. 1291-1298 (1992)
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[Publications] T.Ishida: "Separation par HPLC des Enantiomeres des Metabolites du Cumene" 広島工業大学研究紀要. 27. 13-22 (1993)
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[Publications] T.Matsumoto: "The Enantioselective Metabolism of p-Cymene in Rabbits." Chemical Pharmaceutical Bulletin. 40. 1721-1726 (1992)